2021 Fiscal Year Research-status Report
帝王切開術後の母親の授乳前後のオキシトシンの推移とその要因について
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20K10834
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
永橋 美幸 (荒木美幸) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (10304974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西谷 正太 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命講師 (50448495)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 帝王切開 / 唾液オキシトシン / 授乳 |
Outline of Annual Research Achievements |
【問い1】帝王切開術後の褥婦の授乳前後の唾液オキシトシンの分泌にどのような要因が関係するのか 対象は, 予定帝王切開術後の産後4日と産後6日にあたる経過に異常が見られない褥婦, 調査期間は2019年3月~11月, 2021年4月~10月とした.産後4日と6日に3時点の唾液採取を行い, 調査は観察,カルテ, 自記式質問紙, STAI調査票から行った. 分析は, 対応のあるt検定, t検定, Pearsonの積率相関分析, Spearmanの順位相関分析, 一元配置分散分析を行った. 唾液OT濃度は素点をZscoreに変換して使用した. 研究の同意が得られた29名のうち, 3名を除いた, 初産婦10名, 経産婦16名の合計26名を最終的な対象者として分析を行った. 産後4日および6日では授乳前と授乳中の唾液OT濃度に有意な差は認められなかった. また, 産後4日と6日の2時点の唾液OT濃度の変化量と, 産後4日の右および産後6日の左右の乳腺開口数に負の相関が認められた(p=0.020, r=-0.454 / p=0.046, r=-0.394 / p=0.019, r=-0.456). 分娩歴, 術後疼痛, 児出生から初回授乳までの時間, 産後の児の栄養方法とは関連がみられなかった. 今回, 2時点の唾液OT濃度の変化が抑制された機序は明確にはできなかったが, 陣痛や子宮頸管の拡張を経験していないこと, 手術中に硬膜外麻酔とOT注入をうけたこと, 授乳以外の要因で授乳前に唾液OT濃度のベースラインが上昇した可能性があることが授乳中の唾液OT濃度の上昇を抑制したのではないかと推測された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書の【問い1】「帝王切開術後の褥婦の授乳前後の唾液オキシトシンの分泌にどのような要因が関係するのか」については まず、産後4日および6日では授乳前と授乳中の唾液OT濃度に有意な差は認められないこと、「乳腺開口」のみ授乳前後の唾液オキシトシンの分泌に関係することが解明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降は、研究計画書記載の【問い2】唾液オキシトシンの分泌にどのような要因が関係するのか、「DNAメチル化」を含め解明する予定である。遺伝子の発現を調節するエピジェネティクな機構として、DNAのメチル化がある。DNAメチル化とはDNAを構成する4つの塩基(A,T,G,C)の中のC(シトシン)についている水素がメチル基(CH3)に変化することを示す。塩基配列のある部分がメチル化すると、遺伝子の働きが制御される。オキシトシン分泌の要因の1つとして、オキシトシンの受容体の合成に関わるDNAにおいてスイッチがオフになっているのではないかと考える。「DNAメチル化」には可逆的な性質があるため、脱メチル化を促進するような手段や介入法について示唆を得たい。
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Causes of Carryover |
倫理委員会への申請許可が間に合わなかったため解析に用いる試薬等の購入に至らず残金が発生した。次年度は唾液オキシトシンの分泌にどのような要因が関係するのか、「DNAメチル化」を含め解析に用いる試薬品、消耗品等の購入に充てる予定である。
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