2020 Fiscal Year Research-status Report
女子受刑者への子育て養育能力向上プロジェクトの構築と効果の検証
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20K10951
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
鈴井 江三子 大手前大学, 国際看護学部, 教授 (20289218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 美保 関西医療大学, 保健看護学部, 講師 (20554538)
西村 直子 大手前大学, 国際看護学部, 教授 (30548714)
エレーラ ルルデス 大手前大学, 国際看護学部, 准教授 (40597720)
判治 康代 大手前大学, 国際看護学部, 助教 (70595800)
木村 聡子 大手前大学, 国際看護学部, 講師 (90524918)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女子受刑者 / 養育行動 / 肯定的・否定的 / 尺度 / 児童虐待 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に実施した研究内容は主に3つある。一つは、加古川刑務所女区の入所者172名中、18歳未満の子どもをもつ41名を抽出し、そのうち研究協力に同意の取れた30名の女子受刑者を対象に、入所半年後に1回目の子育て面談を行い、その際、同時にPNPS(Positive and Negative Parenting Scale:肯定的・否定的養育行動尺度)を用いて、養育行動に関する調査を実施した。得られたデータを基に、現在データの分析中である。 二つ目は、PNPSの調査時に、女子受刑者自身の養育体験、未成年期の行動特徴、及び、子どもへの関わり(養育行動)について聞き取り調査を行い、未成年期の行動特徴と彼女達がもつ養育行動について、女子受刑者の意見も踏まえて養育体験の影響などの考察を行った。また、子育てに関する面談を継続的に行うために、2回目の面談を、1回目の面談後半年目に行い、1回目の面談以降、子どもや家族への関わりについて起った行動変容についても聞き取り調査を行った。 三つ目は、上記受刑者30名のうち、4歳未満の乳幼児をもつ初産婦の女子受刑者1名を対象に、日本版Nursing child assessment teaching scales(JNCATS)を用いて、JNCATSの資格を取得した小児看護学領域の研究者により、養育者のもつ「子どものCueに対する感受性」「子どもの不快な状態に対する反応」「社会情緒的発達の促進」「認知発達の促進」の4つについて、4回の面談調査を行った。本調査は2019年度に実施したPNPSの予備調査で分かった、女子受刑者の養育行動の解釈として、否定的養育行動に傾倒し、なかでも子どもへの過干渉や非一貫性が高い値を示したために、その要因分析を試みた調査である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
女子受刑者の面談による調査は、コロナ禍ではあったが非常事態宣言の期間以外は実施が可能であり、ほぼ定期的に面談を実施し、PNPSと日本版JNCATSの尺度を用いた調査と子育て相談を行うことができたことから、加古川刑務所における面談と尺度を用いた調査はおおむね順調に進展していると考える。また、刑務官を対象とした児童虐待や暴力に関する意識調査は、2020年度は感染症対策による時間的、人的余裕がないために実施できていないが、2021年度には実施予定である。この他、2021年8月に、研究代表者が学会長を務める日本フォレンジック看護学会において、パース州保健省の元事務局長を招聘し、パース州にあるボロニアプレレリースセンターで実施されている女子受刑者へのPTSDサポートに関する講義を行ってもらう予定である。 他方、女区を担当する研究協力者の刑務官と一緒に、パース州にあるボロニアプレレリースセンターにおける女子受刑者への処遇改善とPTSD改善に向けたサポート体制の研修参加は実施できていないが、渡航が可能と考えらえる今年度末か来年度に実施予定である。また、和歌山刑務所での調査は収容人数も多く、コロナ禍での感染症対策の徹底もあり、部外者の面談が難しく、母子面談への介入指導も子どもへの影響を考えて見送りとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に実施した調査結果を分析し、研究成果物を国際・国内学会や学会誌に公表予定である。そして、それらの結果を基にして、女子受刑者への養育能力の傾向を明らかにし、よりよい子育てを行うための、女子受刑者を対象とした子育て教育プログラム案を作成する。 また、30名の女子受刑者のうち、出所をしていない者を対象に、2回目の継続面談を実施すると同時に、出所前の3回目となる子育て面談も実施する。継続的な面談を行うことで、女子受刑者の行動変容について調査・分析し、収監中であっても行動変容に影響を与える要因が何であるのかを考察し、収監中の関わり方の一工夫として提示する。加えて、3歳児未満の子どもをもつ女子受刑者への愛着形成を促す要因や言葉かけなどを明らかにし、子どもの人格形成の基盤となる重要な4歳児までの子どもをもつ女子受刑者への子育て支援を明らかにする。 この他、女区を担当する刑務官を対象に児童虐待や女性への暴力に関する意識調査を実施予定である。また、渡航が開始された場合には、女区を担当する研究協力者の刑務官と一緒に、パース州にあるボロニアプレレリースセンターを訪問し、同施設における女子受刑者への処遇改善とPTSD改善に向けたサポート体制の研修に参加予定であり、刑務官の研修内容への示唆を得る。
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Causes of Carryover |
2020年度計画として、研究協力者である加古川刑務所女区主任刑務官と一緒に、パース州にあるボロニアプレレリースセンターにおいて女子受刑者へのトラウマケアの実際と取り組みについて研修を行う予定であった。 しかし、コロナ禍のため渡豪できず、2021年度か2022年度に実施を変更せざるを得なかった。2021年度中に渡航が可能であれば行く予定であるが、難しい場合は2022年度中に実施予定である。そのため、旅費の予算が当初の計画よりも少なくなった。また、前回の科研費で購入した資料整理用のコピー機が故障したため、今回の科研費で新たに購入したため、当初予算配分どうりには使用できなかったが、研究を実施するうえでは問題の無い範囲である。
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Research Products
(6 results)