2020 Fiscal Year Research-status Report
モンゴル国一次・二次医療機関の公衆衛生看護技術の向上とサポートシステム構築の試み
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20K10973
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Research Institution | Komazawa Women's University |
Principal Investigator |
武澤 千尋 駒沢女子大学, 看護学部, 准教授 (50410204)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モンゴル / 看護師 / 公衆衛生活動 / 多職種多機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、ウランバートル市の一次・二次医療機関における公衆衛生活動の現状把握と良好実践の抽出のため、参加観察を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い実施困難であった。代わりに、文献検討や聞き取りを中心に取り組み、次の成果があった。 まず、文献から、モンゴル国には日本で言う保健師資格はないため、公衆衛生看護教育は看護師養成教育の一部として行われており、歴史も浅く2013年に開始されていた。現在は、国内に看護師養成大学が計9大学ある。さらに公衆衛生看護学教育を担当する大学教員に協力依頼し、勤務先のシラバスの提供を受けて内容を翻訳した上で、教育内容の聞き取りを行った。その結果、公衆衛生看護学は2科目4単位にとどまり、自国語の教材がとても少ないため、海外の教科書や資料を用いて授業準備をするなどの苦労がある。さらに、公衆衛生看護の実践経験を有する教員がいない状況であり、実践的な教育に困難を感じていることがわかった。 次に、公衆衛生活動の専門家の立場として、モンゴル国の保健ソーシャルワーカーに着目し、職務規定の翻訳および、保健ソーシャルワーカーの実際の活動内容について聞き取りを行った。この結果、保健ソーシャルワーカーの職務内容は、日本の保健師の職務内容に重なる内容があり、公衆衛生活動を担う重要職種であることを確認し、保健ソーシャルワーカーによる公衆衛生活動の良好実践事例を把握できた。 しかしながら、住民に最も近い存在である一次医療機関においては、公衆衛生活動の日常的な推進役として、看護師の活用は欠かせない。そこで、多職種多機関からなる公衆衛生活動推進チームを結成し、ディスカッションを継続することで、遠隔技術を駆使し、汎用性のある公衆衛生実践を試行するとともに、看護師の活用可能性を探ることが重要であると解釈している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、ウランバートル市の一次・二次医療機関における公衆衛生活動の現状把握と良好実践の抽出のため、参加観察を計画していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、実施できなかった。 年間を通じて、感染症対策に関連した医療従事者、特に看護師の多忙が続いた。現在も、病院内のコロナ罹患者ケアと感染予防対策及び、地域住民へのPCR検査とワクチン接種に関連する業務で多忙である。研究協力者のスケジュールや疲労の程度から、頻繁なディスカッションを計画するのが困難であり、しばらくはこの状況が続くと予測している。 公衆衛生看護活動の実践においては、看護師の多忙に加え、多人数を集めて対面で実施する活動内容は特に制約を受けている。このため、遠隔技術を駆使した、多職種多機関連携チームによる公衆衛生活動を試作、実施することで、あらたな公衆衛生活動の推進と看護師の活用について観察する方向性に変更している。
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Strategy for Future Research Activity |
モンゴル国において、保健ソーシャルワーカーが公衆衛生の専門家であったとしても、特に住民に最も近い存在である一次医療機関においては、公衆衛生活動の日常的な推進役として、看護師の活用は欠かせない。しかし、感染状況下で多忙であるため、看護師の参集・参加には困難を伴う。そこで、職種と所属が異なる公衆衛生活動推進チームを結成し、ディスカッションを継続し、遠隔技術を駆使することで、感染状況下においても研修参加を可能とし、多職種多機関連携チームのアイディアにより、汎用性がある公衆衛生実践の検討を続けることとする。この結果で、展開された公衆衛生実践は、多職種多機関チームのフォーカスグループインタビューにより評価していくことで、公衆衛生活動としての意義や展開可能性、看護師の活用可能性の考察を続ける。 最終的に、公衆衛生活動の提供者のネットワーク化と展開技術の蓄積を目指すが、これについては、試作した研修参加者にグループ化を呼びかけることを検討している。
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Causes of Carryover |
今年度は、モンゴル国への渡航を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、旅費を使用しなかった。また、日本語が堪能な研究協力者に助けられ、予定していた翻訳経費を節約できた。 次年度は、多職種多機関の構成員からなる公衆衛生活動推進チームが企画した公衆衛生活動研修プログラムの実施と評価を計画しているので、この活動に伴い必要となる経費にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)