2022 Fiscal Year Research-status Report
公衆衛生看護管理者を対象としたシミュレーション型能力育成プログラム開発
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20K11034
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Research Institution | Toyohashi Sozo University |
Principal Investigator |
鈴木 知代 豊橋創造大学, 保健医療学部, 教授 (50257557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 純子 静岡県立大学, 看護学部, 助教 (10436959)
杉山 眞澄 静岡県立大学, 看護学部, 准教授 (50781738)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 公衆衛生看護管理者 / コーチング / GROWモデル / サーバントリーダーシップ / アクションリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、東海公衆衛生雑誌投稿、テーマは「市区町村母子保健事業クレームの実態と管理的立場の保健師研修の検討」。これは、2019年に実施した全国の市区町村母子保健担当部署の管理的立場の保健師を対象に、1年間のクレームの有無と件数、クレーム申し立て者・方法・場面・内容、職場のクレーム対応、クレームに関する考えを無記名自己記入式の質問紙で調査したものである。1,918か所の市区町村に調査票を配布し、回収された調査票は528票(回収率27.5%)。経験年数は21年~30年が最も多く238人(45.0%)、役職の有無では役職「有」が440人(83.3%)であった。1年間のクレームの有無では、クレーム「有」が357件(67.6%)を占めた。クレームの内容は、「保健師・栄養士等の専門職の対象者への支援に関すること」が最も多く、266件(50.4%)であった。具体的な内容は、「児の発達の遅れへの保健師の支援に対しての不満」41件、「保健師の保健指導内容への不満」42件が多かった。クレームに関する職場の対応と体制では「上司などに報告する体制になっている」411件(77.8%)が多かったが、「クレーム対応を分析して業務改善に活かしている」119件(22.5%)、「クレーム対応を分析して組織改善に活かしている」25件(4.7%)は少なかった。自由記載を分析すると、業務改善・組織改善にクレームを活用するためには、管理的立場の保健師のリーダーシップが必要であった。 この結果を受け次のステップとして、リーダーの役割とリーダーのスタッフへのかかわりを明らかにする研究に入った。A市の管理的立場の保健師3名とともにアクションリサーチの方法で、研究者5名とグループディスカッションを実施、結果を分析し、公衆衛生看護管理者を対象としたシミュレーション型能力育成プログラムの作成に取り組んでいる段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アクションリサーチの方法でA市の管理的立場の保健師3名と研究者5名とともにグループディスカッションを実施し、分析結果を基に、公衆衛生看護管理者を対象としたシミュレーション型能力育成プログラムの作成に取り組んでいる。2021年12月より2023年4月まで、計7回のグループディスカッションを行い分析がほぼ完了している。その結果を基に作成する管理者を対象とした能力育成プログラムの作成が遅れている。進行としてはグループディスカッションでは、業務改善と同時に組織改善に取り組む管理的立場の保健師の戦略や意図、実際の行動やスタッフへのかかわり方等がグループディスカッション内容から抽出され、リーダーの具体的な役割と戦略、意識、行動が明らかとなった。特に業務改善や組織改善への取り組みのプロセスをGROWモデルを活用して、5つのStepで整理したことで、現状分析ができ、目標の明確化、資源の再発見、選択肢の再発見に結び付いていた。また、私たち研究者がアクションリサーチの方法でグループディスカッションに参加したことは、管理的立場の保健師がこれまでの行動を想起し、意味づけることに尽力できたと考えている。 現在、その内容を構造化し、教育プログラム作成に反映させているが、やや進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
管理的立場にある保健師の公衆衛生看護管理能力の発展過程を明らかにするために、これまでA市の管理的立場の保健師とともに研究者はアクションリサーチの方法を活用して、グループディスカッションを7回実施した。その分析結果を、今後の公衆衛生看護管理能力向上への教育に展開していく。 教育プログラムは、グループディスカッションで使用したコーチングのGROWモデル、分析に活用したサーバントリーダーシップの視点を基盤として、作成していく方針である。 またアクションリサーチの方法で1市町村の管理的立場の保健師とともに研究者は継続的にグループディスカッションを行ったことが、リーダーの行動や役割などの抽出に繋がっている。作成する公衆衛生看護管理能力育成には、アクションリサーチの方法も取り入れる方針である。
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Causes of Carryover |
保健師の研修に使用するテキストの改訂版の修正が済んでいるので印刷を計画している。現在のテキストは、クレーム研修に使用しているが、専門職個人の対応が中心になっている。このテキストに関してはクレーム対応事例をいくつか作成しているので研修で使うケースメソッド事例(介護職、看護職、保健師の活動場面での事例)を追加していく。 専門職個人の努力だけでは、業務改善や組織改善に結び付けるのは難しく、リーダーの力量形成が必要であることが私たちの研究で明らかとなっている。そのため、リーダー養成のためには、公衆衛生看護の管理能力を向上させるための研修プログラムと研修に使うテキストが必要であり、テキスト作成を計画している。 また、研究成果を学会(日本公衆衛生学会、日本公衆衛生看護学会)に発表予定である。
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