2020 Fiscal Year Research-status Report
外傷性脳損傷患者のメタ認知を測定する行動課題の作成と臨床的有用性の検討
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20K11178
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 一生 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (90638280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メタ認知 / 外傷性脳損傷 / 行動評価 / 神経心理学的検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
外傷性脳損傷患者は自身の能力や障害の程度を正しく見積もることが困難で、しばしば自身の能力を過大評価する。これは自己認識(self-awareness)の問題と考えられており、このような患者にはリハビリテーションの重要性が理解されづらく、訓練の大きな制限要因となる。しかし、上記の能力を定量的に評価できる方法がないのが現状である。 本研究では、課題遂行の予測的可否判断能力(与えられた課題が自身の能力で遂行できそうかを事前に判断する能力)に着目し、この能力を行動学的に測定することで、患者のself-awarenessの問題の定量評価を試みる。まず、課題遂行の予測的可否判断能力を測定する行動課題を作成し、20-50代の健常者のデータを集め、各年代の正常範囲を算出する。次に外傷性脳損傷患者のデータを集め、健常者データとの比較から、self-awarenessの能力が低下した患者をただしく検出することができるのか(臨床的有用性)を検討する。さらに、self-awarenessが注意や記憶、遂行機能などの他の認知機能とどのような関係にあるのか、メタ認知のもう一つの側面である行動のモニタリング(自身の行動が適切かどうか評価する能力)との関連性を検討していく。 self-awarenessや行動モニタリングといったメタ認知能力は私達が社会に適応していく上で非常に重要な能力である。その能力を測定できる課題を作成し定量評価が可能となれば、患者の復職、復学などの社会的転帰との関連やメタ認知に対する介入効果の判定などが可能になる。 現在、20代のデータ収集が完了しており、若年者のメタ認知は正確だがやや自身の能力を過小評価しているという結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、メタ認知測定のための行動課題の作成、20代から50代の健常被験者からのデータ収集、外傷性脳損傷患者を対象とするための倫理審査等の手続きを行った。行動課題の作成にあたっては課題難易度を検討し、データ収集のためのノートパソコンを整備した。健常者のデータ収集に関しては、COVID-19の影響があり進捗が遅れているが、20代、30代のデータ収集は完了し、40代、50代のデータ収集を継続している段階である。外傷性脳損傷患者を対象とするための手続きに関しては、倫理委員会の承認が得られた。度重なる行動制限のため健常データにおいても学内での収集が難しい時期があり被験者のリクルートに遅れが生じている。また患者データに関しても倫理委員会の承認を得た後、データ収集が開始できていない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者のデータに関しては引き続きデータ収集を続ける。患者データに関しては感染対策など徹底した上で、データ収集が可能な時期に集中的にデータ収集できるよう準備をすすめていく。
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Causes of Carryover |
COVID-19により、学会参加に係る旅費が生じなかったこと、被験者募集が滞り、人件費、謝金の支出が少なかったため、次年度使用額が生じた。今後、被験者からのデータ収集を行い、謝金やデータ収集にかかる人件費等に次年度予算、次年度使用額を充てる予定である。
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Research Products
(5 results)