2020 Fiscal Year Research-status Report
身体運動のパフォーマンス向上を促す最適な体幹姿勢の探求:脱力と技術発揮の関係
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20K11337
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小池 貴行 大分大学, 理工学部, 准教授 (50528320)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動依存トルク / 体幹姿勢 / パフォーマンス / 筋緊張 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,円滑な身体運動実施を可能にする上で肩関節周辺筋群と四肢の筋群の緊張緩和が必要であるが,その緩和を可能にする適切な体幹姿勢の探求とその結果得られる運動パフォーマンスの変化,及びその状態保持を可能にする定性的な表現について検討するものである. 初年度は,(1)全身の脱力や緊張を促す体幹姿勢を探求するとともに,それら姿勢で運動をした結果,得られるパフォーマンスとの関係について調べるために実験計測を行った.さらに,(2)運動により関節周りの回転力であるトルクが発生するが,このトルクは筋緊張の影響を受けるため,筋収縮により能動的に発揮される筋トルクに加え,関節軸の加速度,上肢や下肢の関節と合成重心から算出されるコリオリ力,ジャイロ効果など,運動により他動的または力学的に発揮される運動依存トルクの算出方法の検討を行った. (1)では,野球の投球動作,垂直跳びを対象に実施した.特に投球動作では,投球前の体幹姿勢を脊柱の本来の湾曲状態に保つものと体幹脱力を促すための胸椎後弯姿勢を取らせ,投球動作を実施した.その結果,投球速度は後者よりも前者の姿勢が高かったが,なぜ,胸椎後弯姿勢では投球速度が高められないのか?は明らかにできなかった.垂直跳びでは,身体への負荷増加に伴う跳躍動作への影響について,検証しており,現在解析中である. (2)の運動依存トルクの計算では,剣道の面打ち動作中の上肢運動と全力疾走中の脚部運動を対象にそれらトルクの算出を行った.いずれも運動依存トルクが円滑な動作の実施において重要であるが,一方で運動依存トルクとは反対方向に筋トルクが発揮し,関節運動の制御に関与するためと分かった.この見解は先行研究の結果を支持した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,コロナ禍により,ヒトを対象とした実験実施が困難な時期もあったが,実験実施が可能な状況下では感染防止に努めつつ,多くの被験者を集め,実験を実施することができた.また,運動依存トルクという解析方法を修得でき,これらトルクと筋収縮の関係について新たな知見を得ることができたからである.また,新たな動作解析システムの導入により,迅速な基礎データの取得が可能となり,本質的な解析に時間を費やすことが可能となったからである.
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Strategy for Future Research Activity |
投球動作に置いて示された課題である,なぜ,胸椎後弯姿勢では投球速度が高められないのか?のメカニズムを解明するために,体幹から投球腕にかけての3次元の力学的解析を行う.その際,修得した運動依存トルクの算出方法を利用して,運動依存トルクと筋トルクの関係について明らかにし,体幹姿勢と脱力の関係性について検討する.これに加え,垂直跳びの力学的解析も運動依存トルク等を利用して進める.また,2年目以降の研究課題である,脱力を促す身体の姿勢にかかる定性的な表現について調査を開始する.
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Causes of Carryover |
残額発生理由は,コロナ禍により,当該年度の学会発表に関する旅費や論文出版などへの執行が困難であったためである.(学会発表はオンライン開催となり,論文については,英語校正や査読の実施まで,過度の時間を要した.) 次年度の使用計画は,引き続きコロナ禍が続き,当初計画にあった学会の対面開催がオンライン開催へと変更される可能性が高いため,投稿論文の出版費用や解析ソフトウェアライセンスの更新,初年度導入した計測装置用の部材(床反力計接地台)等に執行することを検討している.
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Research Products
(4 results)