2021 Fiscal Year Research-status Report
腸管IgAと腸内細菌の結合弱化の予防を基軸としたインスリン抵抗性の制御戦略
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20K11580
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鶴田 剛司 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (90728411)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食物繊維 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの我々の研究から動物性油脂の過剰摂取が引き起こす腸管IgAと腸内細菌の結合弱化がインスリン抵抗性の一因であることが示唆されている。本研究では、腸管IgAと腸内細菌の結合を促進することが明らかとなっている食物繊維を摂取することによって腸管IgAと腸内細菌の結合を調節し、インスリン抵抗性を制御可能であるかを検証した。グルコース4分子が環状構造を形成している食物繊維を、高動物性油脂食を給餌した肥満マウスに投与し、腸内細菌に結合する腸管IgA量、腸管IgAが認識する腸内細菌種、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRおよび耐糖能を評価した。その結果、腸内細菌に結合する腸管IgA量は対照肥満群と比較して食物繊維摂取群で増加し、HOMA-IRおよび耐糖能異常は対照肥満群と比較して食物繊維摂取群で顕著に改善した。また、高動物性油脂食の摂取によって腸管IgAが結合する腸内細菌種は変化しており、食物繊維の摂取によってそれはさらに大幅に変化していた。各腸内細菌に対してどの程度の腸管IgAが結合しているかの指標であるIgA coating indexと耐糖能およびHOMA-IRとの相関性を評価したところ、EscherichiaのIgA coating indexと耐糖能は負の相関を示し、AcetatifactorなどのIgA coating indexがHOMA-IRと正の相関を示した。これらの結果から、高動物性油脂食の摂取によってEscherichiaへの腸管IgAの結合が減少する一方で、Acetatifactorなどの特定の細菌属への腸管IgAの結合が増加することが明らかとなり、食物繊維の摂取によってこれらの変化が解消されることが明らかとなった。また、食物繊維の摂取による腸管IgAと腸内細菌の結合調節作用がインスリン抵抗性の改善に関係していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、食物繊維の投与試験およびその追試が完了しており、並行して進めている動物性油脂の代替油脂の給餌試験もスタートさせている。さらに、これらの試験で得られた結果におけるIgAの関与を検証するためのIgA欠損マウスの繁殖も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
動物性油脂の過剰摂取が腸管IgAと腸内細菌の結合を弱め、結合する腸内細菌種を変化させる詳細な機序は依然として不明であるが、動物性油脂中の主要成分であるトリグリセリドを構成する多様な脂肪酸が関与していると考えられる。今後の研究では、高脂肪食中の動物性油脂を脂肪酸組成の異なるその他の油脂に置き換えることが腸管IgAと腸内細菌の結合にどのような影響を及ぼすかを検証するとともに、インスリン抵抗性への影響を評価する。代替油脂として既存の植物油だけでなく、脂肪酸のエステル置換によって生成した構造油脂を供試する。本試験で得られた結果および食物繊維の投与試験で得られた結果におけるIgAの関与を検証するためにIgA欠損マウスを用いた試験を実施していく。
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