2022 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンD栄養における身体的・精神的生活関連因子の解析と効果的栄養改善方法の探索
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20K11594
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
津川 尚子 大阪樟蔭女子大学, 健康栄養学部, 教授 (30207352)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ビタミンD / カルシウム / 栄養改善 / 母乳 / 疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる課題は、[①ビタミンD栄養と日常生活および身体的・精神的疲労の関連性の検討、②積極的取り組みを促す効果的ビタミンD栄養改善方法の探索、③食事からの効率的ビタミンD補給方法の検討、④ビタミンD必要量におけるカルシウム摂取量の影響の検討]である。申請者は、母乳中ビタミンD濃度が約30年前に比べて約1/2に低下していることを明らかにしており、課題②、③において授乳婦の栄養改善の対策が重要と考え、R4年度は授乳婦に対するビタミンD補給効果後の短期経時的な母乳分析を完了し、短期的なビタミンD血中濃度の上昇に付随して母乳中濃度も5~10時間目にピークを示すことを確認したが、乳児への補給量としてはやはり十分量ではないことを確認した。課題④について、課題①の集積データをもとにカルシウム摂取量が血中25(OH)D濃度に対する重要な影響因子となるエビデンスを得た。これに加えて、ラットを用いた動物実験にも着手し、カルシウム摂取量の違いが体内のビタミンD代謝に影響し、血中25OHD濃度の半減期短縮により血中濃度低下を招くメカニズムを確認することができた。これまで、ビタミンDとカルシウムの関係は、ビタミンDが腸管からの能動的カルシウム輸送を促進するという「ビタミンD摂取→カルシウム吸収」の方向でしか捉えられていなかったが、今回「カルシウム摂取量→ビタミンDの栄養状態・要求量へ影響」という方向を具体的に確認することができた。現在、これらの結果を公表するための論文作成に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(R2)年度~R3年度は、本研究の主たる4つの課題[①ビタミンD栄養と日常生活および身体的・精神的疲労の関連性の検討、②積極的取り組みを促す効果的なビタミンD栄養改善方法の探索、③食事からの効率的ビタミンD補給方法の検討、④ビタミンD必要量におけるカルシウム摂取量の影響の検討]のうち、①、③に着手し、一定の成果を得ることができた。R3年度は最近の若年女性のビタミンD栄養低下に関連して、授乳婦のビタミンD栄養低下が母乳のビタミンD濃度低下を招いている問題に対する対策の一環として、授乳婦へのビタミンD補給効果の詳細な検討に着手することができた。R4年度は、母乳分析を完了させ、コロナ禍の影響で開始を見送っていた④の研究に着手し、カルシウム摂取量に応じてビタミンDの消費量が変化する有力な結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響で、介入を主体とした課題②の取り組みが進められていないため、R5年度はVDDQ-Jを用いた栄養指導効果の検証を可能な限り積極的に進める。また、「VitD栄養改善マニュアル(Yes/Noチャート形式による提案)」の作成と効果の検証を進める。R2年度~R4年度の成果についても順次論文化を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、介入を主体とした課題②の取り組みを進めることが困難であったことが主な理由である。また、課題④の動物実験において、ビタミンD代謝酵素の遺伝子発現解析の条件決定が難しく、十分な解析を進めることができなかった。R5年度は課題②に関してVDDQ-Jを用いた栄養指導効果の検証を進めつつ、「VitD栄養改善マニュアル(Yes/Noチャート形式による提案)」の作成と効果の検証を進める。課題④のラットを用いた動物実験についてビタミンD代謝酵素の遺伝子発現解析の条件を決定し、詳細なメカニズム解析を進める。
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