2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of intestinal environment improvement mechanism by natural wound healing material using disease mouse model
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20K11620
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
清水 美穂 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (00500399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 恵理 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (50466877)
跡見 順子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員教授 (90125972)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 卵殻膜 / LSZ / 潰瘍性大腸炎モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な腸の病気を含む炎症性腸疾患(IBD)患者は年々増加しており、特に腹痛や下痢、血便などを伴う潰瘍性大腸炎は、発症原因が不明な上、現在の治療法が副作用を伴うため、疾患の全体像の理解と治療法の確立が早急に求められている国の指定難病である。現在IBDに用いられている対症療法は副作用を伴い、腸管粘膜を治療させる薬剤はなく、医薬品以外の栄養学的介入が第一であると考えられている。卵殻膜(ESM)は、古くから創傷治癒材料として利用されており、近年は化粧品やサプリメントの原料に使用されて、生活の知恵を代表する安全な天然材料である。リゾチーム(LSZ)は卵白や卵殻膜に存在し、殺菌作用や炎症抑制の働きを持つため、近年、卵白から抽出したLSZが医薬品や化粧品などに応用されている。しかし、これらの科学的根拠やメカニズムの解明に関する報告は少ない。本年度はデキストラン硫酸(DSS)誘発大腸炎モデルマウスを用いて、1日1回の経口投与(人がサプリメントとして摂取する量相当)によるESMとLSZの効果を検証することにした。まず、正常C57BL/6マウスへのESMあるいはLSZ投与を2週間行ったところ、ESMでは直腸、LSZでは十二指腸・空腸・結腸・直腸において組織の柔軟さを担うIII型コラーゲン発現がこれらを与えない対照群と比較して有意に上昇し、抗炎症・線維化抑制が期待できたため、次に1週間のESMあるいはLSZ投与後にDSSで大腸の炎症を誘発する実験を行った。DSS投与中は毎日、体重変化・便の硬さ・血便の様子を記録し、疾患活動指数(DAI)を用いて疾患の臨床的進行を評価した(数値が高い方が病態が進行)。DSSモデルでは2日目以降にDAIが上昇したが、ESMとLSZ投与群で3日目に有意に(p<0.01)それが抑制された(n=8)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりマウス病態モデルを使った実験を実施することができ、期待どおりESMによるDSSモデルマウスの病態進行を抑える結果を得ることができた。また、LSZの経口投与が予想以上にESMの効果を模倣することが明らかとなり、抗菌活性との関係に興味がもたれる。
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Strategy for Future Research Activity |
①ESM及びLSZ摂取に腸のESM環境改善につながる3型コラーゲン発現効果があることが明らかになったため、腸のどの細胞が適応しているかを、培養細胞を用いた実験で明らかにしたい。②DSS誘発大腸炎モデルマウスを用いた実験で病態予防効果があることが明らかになった。LSZは抗菌活性があるため腸内細菌叢に影響を与えたことが予想される。2022年度は糞便解析により検証する。また、腸の組織染色により動物体内における細胞とECMの変化を評価する。これらをまとめて投稿論文作成を行う。③病態モデルの予防メカニズムの背景にあるESM・LSZの組織分布について、東大との共同研究でトリチウム標識体の作成及び動物実験を推進予定である。各臓器分布は可溶化した組織中の放射活性を調査すればよいが。課題として、アイソトープ実験可能な共通施設が減っているという状況下で、消化吸収された標識ESM・LSZ消化物の同定や組織切片中の細胞内ラベル分布を検出できる装置を探す必要がある。
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Causes of Carryover |
2021年度は引き続きコロナ禍で実験を差し控える必要があったため残高が生じたが、2022年度の腸内細菌叢の解析用の経費として支出予定である。
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Research Products
(4 results)