2020 Fiscal Year Research-status Report
黄ニラの細胞内グルタチオン上昇を介した肝臓保護作用に関する研究
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20K11662
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川上 賀代子 就実大学, 薬学部, 助教 (00505935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪井 誠二 就実大学, 薬学部, 教授 (50172052)
守谷 智恵 就実大学, 薬学部, 教授 (60253001)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 黄ニラ / グルタチオン / 酸化ストレス / 地方野菜 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスは、糖尿病をはじめ様々な疾病の発症や増悪化に関わると考えられている。生体内の抗酸化物質であるグルタチオン量を高めることは、酸化ストレスが関与する疾病の治療や予防に有効であることが期待される。申請者のグループでは細胞内グルタチオン上昇活性をもつ食品成分のスクリーニングを行っており、黄ニラに強い活性があることを見出した。黄ニラは岡山県の地方野菜であるが、認知度は低く、その機能性や成分はほとんど明らかとなっていない。本研究では、黄ニラが細胞内グルタチオン上昇を介して酸化ストレスによる肝臓障害保護作用を発揮することを明らかにし、機能性食品への応用および地方野菜の振興につなげることを目的としている。 黄ニラは青ニラの地上部を刈り取り、被覆資材で太陽光を遮断する軟化栽培による周年出荷の野菜である。そこで、黄ニラの部位別と時期別の細胞内グルタチオン上昇作用の解析を行った。ヒト肝ガン細胞HepG2に黄ニラ抽出物を添加し、24時間培養後、細胞内のグルタチオン量を測定した。部位別で比較すると、総ポリフェノール量は廃棄部の方が可食部より約2倍高かったが、細胞内グルタチオン量は両部位ともにほぼ同じ値を示した。収穫時期別の細胞内グルタチオン上昇作用を調べた結果,10月収穫の黄ニラを処理することで細胞内グルタチオンが最も上昇することが分かった。総ポリフェノール量は8月が最も低く、10月が高値を示した。収穫前に露光処理を行うと廃棄部でポリフェノール量の増加が見られたが、細胞内グルタチオン上昇作用は露光なしの方が高かった。さらに、同時期(8月)に収穫した青ニラと黄ニラを比較すると、青ニラの総ポリフェノール量の方が1.7倍高かったが、細胞内グルタチオン上昇作用は黄ニラの方が高かった。以上の結果から、黄ニラの細胞内グルタチオン上昇作用に寄与している成分はポリフェノール以外の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、下記の内容で実験を行い研究は概ね順調に進展している。 1.黄ニラ抽出物の調製 品種(ワンダーグリーンベルト、ミラクルグリーンベルト)、部位(可食部、廃棄部)、収穫時期の異なる黄ニラをフードプロセッサーを用いて細断後、50%エタノールを用いて、浸漬・振とう抽出した。黄ニラは通常、太陽光を遮断して栽培し、収穫されるが、栽培期間の途中で 1~3時間程度、太陽光に暴露(露光)することで葉の黄色が濃くなる。そこで、露光ありと露光なしの黄ニラについても調べた。得られた抽出液をエバポレーターと凍結乾燥により濃縮乾固し、黄ニラ抽出物を調製した。 2.黄ニラ抽出物による細胞内グルタチオン上昇作用の測定 ヒト肝ガン細胞HepG2に黄ニラ抽出物を添加し、24時間培養後、細胞内のグルタチオン量をDTNB法によって測定した。また、総ポリフェノール量はフォーリン・チオカルト法を用いて測定した。比較対照としてミラクルグリーンベルトを露地栽培した青ニラも同様に50%エタノールで抽出し、試料とした。部位別で比較すると、総ポリフェノール量は廃棄部の方が可食部より約2倍高かったが、細胞内グルタチオン量は両部位ともにほぼ同じ値を示した。収穫時期別の細胞内グルタチオン上昇作用を調べた結果,10月収穫の黄ニラを処理することで細胞内グルタチオンが最も上昇することが分かった。総ポリフェノール量は8月が最も低く、10月が高値を示した。収穫前に露光処理を行うと廃棄部でポリフェノール量の増加が見られたが、細胞内グルタチオン上昇作用は露光なしの方が高かった。さらに、同時期(8月)に収穫した青ニラと黄ニラを比較すると、青ニラの総ポリフェノール量の方が1.7倍高かったが、細胞内グルタチオン上昇作用は黄ニラの方が高かった。以上の結果から、黄ニラの細胞内グルタチオン上昇に寄与している成分はポリフェノール以外の可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、黄ニラの廃棄部・可食部ともに細胞内グルタチオン上昇作用があることが明らかとなった。次年度は活性成分の同定と細胞内グルタチオン上昇メカニズムの評価を行う。 1.活性成分の同定、構造解析 細胞内グルタチオン上昇活性の認められた黄ニラ抽出物を限外ろ過膜、ゲルろ過カラムや逆相HPLCによって分画し、活性成分の同定を行う。単一成分まで分画・精製できたら、NMRやMSなどの各種機器分析を行い、構造解析する。分画したサンプルはヒト肝ガン細胞HepG2に添加し、細胞内グルタチオン上昇作用を順次評価する。 2.黄ニラ抽出物による細胞内グルタチオンメカニズムの解明 HepG2細胞に黄ニラ抽出物を添加し、24時間培養を行う。細胞内のグルタチオン量をDTNB法によって測定する。グルタチオンは、γ-グルタミルシステイン合成酵素(γ-GCS)と、グルタチオン合成酵素の二つによって段階的に生合成され、特にγ-GCS はグルタチオン生合成の律速酵素あるため、発現レベルに及ぼす影響を調べる。また、γ-GCS の発現は転写因子Nrf2により制御されているため、Nrf2の発現を調べることにより、細胞内グルタチオン上昇メカニズムの解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究活動に制限があったため、未使用額が生じた。次年度行う成分同定で大量の黄ニラ抽出物の調製が必要であると見込まれるため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(4 results)