2021 Fiscal Year Research-status Report
黄ニラの細胞内グルタチオン上昇を介した肝臓保護作用に関する研究
Project/Area Number |
20K11662
|
Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
川上 賀代子 就実大学, 薬学部, 助教 (00505935)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪井 誠二 就実大学, 薬学部, 教授 (50172052)
守谷 智恵 就実大学, 薬学部, 教授 (60253001)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 黄ニラ / グルタチオン / 酸化ストレス / 地方野菜 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスは、糖尿病をはじめ様々な疾病の発症や増悪化に関わると考えられている。生体内の抗酸化物質であるグルタチオン量を高めることは、酸化ストレスが関与する疾病の治療や予防に有効であることが期待される。申請者のグループでは細胞内グルタチオン上昇活性をもつ食品成分のスクリーニングを行っており、黄ニラに強い活性があることを見出した。黄ニラは岡山県の地方野菜であるが、認知度は低く、その機能性や成分はほとんど明らかとなっていない。本研究では、黄ニラが細胞内グルタチオン上昇を介して酸化ストレスによる肝臓障害保護作用を発揮することを明らかにし、機能性食品への応用および地方野菜の振興につなげることを目的としている。 黄ニラ抽出物の細胞内グルタチオン量の上昇メカニズムの検討を行った結果、黄ニラ抽出物添加により、グルタチオンの構成アミノ酸であるシステインの取り込みに関与するxCTのタンパク質発現が誘導されることを明らかにした。また、xCTと同様に転写因子であるNrf2の制御下にある抗酸化酵素HO-1のタンパク質発現の誘導や、Nrf2の核移行がみられた。さらに、あらかじめ黄ニラ抽出物を処理することで、過酸化水素による細胞傷害が抑制された。また、細胞内グルタチオン上昇作用を指標に活性成分を逆相HPLCで分画し、最も活性のみられた画分を得た。活性のみられた画分の精密質量分析を行ったところ、(Z)-10-devinylajoeneであることが推定され、合成した標品と活性成分のMS/MSスペクトルおよび、1H-NMRスペクトルデータが一致することを確認した。以上の結果より、黄ニラは細胞内グルタチオン量を上昇させるだけでなく、Nrf2を活性化することにより抗酸化系を誘導することで、酸化ストレスによる細胞傷害を抑制していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、下記の内容で実験を行い研究は概ね順調に進展している。 1.黄ニラ抽出物による細胞内グルタチオンメカニズムの解明 黄ニラ抽出物の添加によるHepG2細胞内グルタチオン上昇メカニズムを調べるために、グルタチオンの構成アミノ酸であるシステインの取り込みに関与するxCTのタンパク質発現量を調べた。その結果、黄ニラ抽出物を添加することにより8、24時間後に0時間に比べてxCTの発現上昇がみられた。xCTと同様に転写因子であるNrf2の制御下にある抗酸化酵素HO-1は8時間後から有意に上昇し、24時間後では0時間と比較して2倍に上昇した。さらに、Nrf2のタンパク質発現を調べた結果、核内のNrf2は1時間後から上昇がみられ、8、24時間後に有意に上昇していることが明らかとなった。さらに、あらかじめ黄ニラ抽出物を処理することで、過酸化水素による細胞傷害が抑制された。 2.活性成分の同定、構造解析 黄ニラ抽出物をSep-PakC18、さらに逆相HPLCを用いて分画した。得られた画分について細胞内グルタチオン上昇作用を順次評価し、最も細胞内グルタチオン上昇作用のみられた画分を得た。活性のみられた画分のポジティブモードのLC-MSによる精密質量分析を行ったところ、特徴的な3つのピークを検出し、活性成分の質量は、208で、プロトン化したもの=209、Naイオンが付加したもの=231、208が2量体化して、プロトン化したもの=417であること、その元素組成は、C7H12S3であることが推定された。データベースで検索すると、(Z)-10-devinylajoene であることが示唆された。合成した(Z)-10-devinylajoeneと活性成分のMS/MSスペクトルデータが一致し、(Z)-10-devinylajoeneの1H-NMR分析から、シス体であることが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、黄ニラ抽出物から活性成分を同定し、細胞内グルタチオン上昇メカニズムの一端を解明することができた。次年度は活性成分(Z)-10-devinylajoeneの細胞内グルタチオン上昇メカニズムの解析と疾患モデル動物を用いた黄ニラ抽出物の有効性の評価を行う。 a. アセトアミノフェン肝障害モデルマウスに対する有効性の検討 黄ニラ抽出物をICRマウスに1週間経口投与する。1晩絶食後、アセトアミノフェンを腹腔内投与し、アセトアミノフェンによって肝障害を誘導する。6時間後に採血と肝臓を採取する。肝障害の指標である血清中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、アルカリホスファターゼ(ALP)を酵素法で測定する。また、肝臓中のグルタチオン量をDTNB法によって測定する。肝臓切片を作成し、HE染色によって病理学的に肝細胞壊死の程度を評価する。 b. 非アルコール性脂肪性肝疾患モデルマウスに対する有効性の検討 C57BL/6マウスを高脂肪高ショ糖食または黄ニラ抽出物含有の高脂肪高ショ糖食で12週間飼育する。経時的に食餌摂取量、体重を測定する。最終日には採血と解剖を行う。内臓脂肪組織(腸間膜脂肪、副睾丸脂肪、後腹膜脂肪)重量、血清中のAST、ALT、グルコース、インスリン、コレステロール、トリグリセリド、酸化ストレスマーカーの測定や、肝臓のグルタチオン量、病理学的画像解析から非アルコール性脂肪性肝炎の改善がみられるか評価する。
|
Causes of Carryover |
研究活動に制限があったため、未使用額が生じた。 次年度行う動物実験で大量の黄ニラ抽出物の調製が必要であると見込まれるため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
|
Research Products
(3 results)