2020 Fiscal Year Research-status Report
Clock Fingerprint: Establishment of Biometric-like Identification Technique for Computer Hardware
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20K11803
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
干川 尚人 小山工業高等専門学校, 電気電子創造工学科, 准教授 (10819311)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クロック周波数 / クロックカウンタ / 特徴量 / 識別子 / クロックフィンガープリント / 機器識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は「原理の確立」を目標として,本助成で恒温槽を始めとする実験装置を導入し,これらを用いて基礎的なクロックフィンガープリント(以下CPF)特徴量の抽出実験を開始した.この実験によって,次の3点について実施した. (1)従来の不安定な温度環境下でCFP特徴量を得る手法に変わる,恒温槽を利用した温度安定環境による特徴量取得手法を開発する (2)上記手法を用いて,実験で得られるCFP特徴量(温度とクロックドリフトの関係性)を回帰式で表現できることを確認する(原理の確立) (3)複数のクロック信号源からも同じ手続きでCFP特徴量が得られることを確認する まず,(1)により,室温環境下で行っていた仕組みから恒温槽による新たな特徴量抽出システムに改良することで,従来数ヶ月かかっていた実験を数日オーダーの短期間で特徴量を取得する仕組みを実現した.また,ここで得られたデータを分析することで,過去の実験では得られなかった低温域(零下20度まで)および高温域(70度まで)の範囲で特徴量を示す回帰式を得ることができた(2).また,これまではCPUに起因するシステムクロックに限定したCFP特徴量を抽出していたが,新たにハードウェアクロックについても計測を行い,システムクロックとは異なる特徴的な回帰式を得ることができた.異種の特徴量の活用可能性は識別精度の向上につながる成果である. 以上の2020年度実施成果は,電子情報通信学会通信ソサイエティの研究会において3件発表し,また特徴量取得手法に関わる一連の成果をまとめたものを1件の論文として電子情報通信学会の論文誌「ネットワークソフトウェア技術とその応用特集」特集号へ投稿し,条件付き採録の結果を得ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず,当初計画通りの実験設備の導入および実験実施をスケジュール通り実施できた.その内容も当初予定のシステムクロック特徴量に加えて,余力があったときに実施予定としていたハードウェアクロック特徴量についても実験を完遂できており,結果も期待以上のデータが得られたため.当初の研究スケジュールでは2021年度に論文投稿としていたが,2020年度中に論文誌への投稿に値する結果をまとめることができており(12月に投稿し,条件付き採録で再査読中),当初の研究スケジュールの予定以上の成果が得られたと言えるため.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は実験システムで得られるCFP特徴量を用いた識別技術の開発を推進し,これを成果としてまとめる(2021年度内に1本以上論文を投稿する).また,本助成による実験システムの改修を進め,取得データ精度の向上を進める.特に本助成によってエンタープライズ製品レベルの基準信号装置の導入を予定しており,これにより更に安定して高精度な特徴量取得を試みる. 2022年度は実用化に向けた基礎検討として,実運用を考慮した環境下で実証実験を行っていく予定である.また,国際会議発表や論文投稿など成果の外部発表を重点的に進める. なお,ここまでの実験で一部新たな課題も見えてきている.一つは恒温槽による安定環境で得られたCFP特徴量と通常環境で観測できるデータのギャップが見られることである.今後はこのギャップを埋めるための補正方式の考案が課題となり,得られる特徴量の回帰式の補正パラメータも踏まえた数理モデルを構築していく必要がある.
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Causes of Carryover |
2020年度は特にコロナ感染症の影響により,主に出張を伴う学会発表が無くなり,その分の予算を代わりに物品費に組み替え,実験システムの拡張を行った(成果として当初想定のものと異なるクロックソースからも特徴量を得ることができた). 残金については,主に実験システムの拡張に関わる消耗品(センサ部品,配線等)や論文執筆に向けた文献購入に充てる.
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