2023 Fiscal Year Annual Research Report
対人距離感の認知メカニズムの解明とその操作技術の開発
Project/Area Number |
20K12023
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
稲垣 未来男 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究員 (40596847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 対人距離感 / 顔 / 視覚処理 / 扁桃体 |
Outline of Annual Research Achievements |
対人距離感の認知は、目の前の相手と快適な距離を保ち円滑なコミュニケーションを進めるために重要な役割を果たす。本研究では対人距離感の認知メカニズムの解明とその操作技術の開発を目指した。先行研究から、情動や社会性に関わる大脳辺縁系の扁桃体が対人距離感の視覚的な認知に関わることが示唆されている。もしそうであれば扁桃体特有の視覚処理様式と適合するように画像操作を加えると、ヒトが感じる対人距離感に影響が表れると予想される。そこで扁桃体で処理される低い空間周波数の強調が、他者の接近にともなう不快さの知覚に与える効果を心理実験により調べた。今年度は本実験の実施とデータ解析を行った。 実験では臨場感を保つように、他人が接近してくる動画を360度カメラで撮影して空間周波数処理を加えた上で、ヘッドマウントディスプレイを通して視覚呈示した。 心理実験の結果、少数の実験参加者(20%程度)において、当初の予想通りに、低い空間周波数の強調が接近にともなう不快さの増大をもたらした。一方、多数の実験参加者(80%程度)では低い空間周波数の強調による効果が見られなかった。実験参加者全体を通して、同じ視覚刺激に対する物理的な距離の見積もりには空間周波数の操作の効果はなかった。 本研究の結果、対人距離感の認知メカニズムには個人差があり、少なくとも2つのグループに分かれることが示唆された。したがって対人距離感の操作技術の確立には、まずはこの個人差が生じる原因の理解が必要になると考えられる。今後は脳機能イメージングなどを駆使したさらなる個人差の研究が望まれる。
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