2020 Fiscal Year Research-status Report
Functional Interaction between MRE11 and ATM in cytoplasmic stress responses
Project/Area Number |
20K12162
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
小林 純也 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (30301302)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストレス応答 / 酸化ストレス / 脳神経変性 / ATM / MRE11 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線高感受性遺伝病A-TとATLDでは、その原因遺伝子ATM, MRE11が放射線誘発DNA損傷応答に重要な機能を持つことが明らかとなってきているが、これら遺伝病患者が示す進行性小脳失調症の発症機構はいまだ明らかとなっていない。本研究課題ではその発症メカニズムに迫るために、近年これら遺伝子の役割が明らかにされつつある細胞質内ストレス応答経路におけるATMとMRE11の役割・機能的相互作用を脳神経幹細胞・血管内皮細胞を用いて明らかにすることを目的の根幹とし、さらに応答時のATM, MRE11との結合因子をプロテオミクス解析で同定、機能解明し、進行性小脳失調の発症機構の解明を目指すものである。 本年度の研究では、主要な外因的性ストレスである酸化ストレスに感受性が高いヒト血管内皮細胞を用いて検討を行った。ヒト血管内皮細胞は以前の我々の研究で酸化ストレス誘導条件(ピオシアニン処理、低線量率照射長期照射)で微小核形成することを明らかにしていたが、そのメカニズムを明らかにするため、低線量率放射線被ばくに反応して発現変化するタンパク質の同定をDIAプロテオーム解析で検討した。その結果、6500種類以上のタンパク質が同定でき、非照射と比較した場合、33種類のタンパク質が低線量率照射で2倍以上に増加するが、高線量被ばくでは発現変化がなかった。また、85種類のタンパク質は低線量率照射でのみ1/2以下に減少しており、その中には微小核形成制御への関与が報告されるタンパク質も含まれており、低線量率被ばくでの酸化ストレス応答時の微小核形成機構に迫ることができる成果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究では低線量率長期照射において血管内皮細胞で顕著に誘導される微小核形成機構に関係するタンパク質群についてDIAプロテオーム解析で同定することができ、酸化ストレス発生時の微小核形成機構の解明に迫る有力な手がかりが得られており、十分な成果が上げられたと考えられる。また、低線量特異的に発現増加する因子についてATM, MRE11との機能的関係性を明らかにすることができれば、ATM, MRE11のストレス応答による役割を解明することにつながると考えられる。ただ、本年度研究ではATM, MRE11をターゲットとした解析の進捗に遅れがあったことから、令和2年度研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度研究において、低線量率長期照射特異的に発現増加するタンパク質をDIAプロテオーム解析で33種類を明らかにできていることから、これら因子のATM, MRE11との関係性について明らかにする。具体的には物理的相互作用があるかを免疫沈降法で検討するとともに、ATM阻害剤やsiRNAノックダウンを行って、ストレス誘導処理を行って、同定因子の発現変化を血管内皮細胞で検討し、関係性があるものについてはヒト繊維芽細胞でも検討を進める。 プロテオーム解析で特異的に発現減少が見られたタンパク質についてもATM阻害剤やsiRNAノックダウンを行って、ストレス誘導処理を行い、同定因子の発現変化を血管内皮細胞で検討し、関係性があるものについてはヒト繊維芽細胞でも検討を進める。 ATMとMRE11の機能的な関係の解明では、免疫沈降法を用いて、ストレス誘導時の物理的相互作用を免疫沈降法で検討するとともに、免疫蛍光染色法で、細胞質内での動態、相互作用を検討する。
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Causes of Carryover |
令和2年度において、本課題の研究代表者小林が4月に所属機関を京都大学から国際医療福大学へと異動し、異動後に研究・実験環境のセットアップ、研究再開に相当の時間が必要であったが、さらにコロナ禍での緊急事態宣言発出などで研究環境整備に大幅な遅れが生じ、実験室での研究再開が年度後半となった。年度前半は研究条件の机上での検討やデータ解析が中心となり、研究費の使用が計上額と比べて大幅に少なくなった。令和3年度は年度初めより、問題なく実験を行うことができる環境にあり、前年度の研究費の残額と合わせて、前年度実験が完了できていない項目・内容を含めて、精力的に実験を行い、研究を遂行する計画である。
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