2020 Fiscal Year Research-status Report
Risk assessment method of sick building syndrome onset based on esterase activity in skin
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20K12210
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
畑中 朋美 城西大学, 薬学部, 教授 (10198749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬渕 智生 東海大学, 医学部, 教授 (30408059)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シックハウス症候群 / フタル酸エステル / 経皮吸収 / エステラーゼ / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シックハウス症候群の原因物質の1つであるフタル酸エステルの経皮吸収に及ぼすカルボキシルエステラーゼ2(CES2)の役割を解明することを目的にしている。令和2年度は、フタル酸エステルのヒト皮膚内代謝と経皮吸収挙動、皮膚内CES2分布量を評価し、以下の研究成果を得た。 フタル酸ジブチル(DBP)にヒト皮膚ホモジネートを添加すると、加水分解物であるフタル酸モノブチル(BP)に代謝され、その代謝速度とDBP濃度の関係はMichaelis-Menten式に従った。得られたMichaelis定数と最大代謝速度は個体間で著しく異なり、DBPに対するエステラーゼの親和性と代謝能の個体差が大きいことが確認された。リコンビナントヒトCES2を用いて同様の代謝実験をおこなったところ、Michaelis-Menten型の代謝挙動を示したが、得られた代謝パラメータ値はヒト皮膚ホモジネートの値とは必ずしも一致しなかった。今後、CES2阻害剤を用いた代謝実験を行い、皮膚内代謝におけるCES2の寄与を明らかにする予定である。 DBPを摘出ヒト皮膚の角層側に適用すると、真皮側には主に代謝物であるBPが検出され、DBPの検出量はわずかであった。DBPとBPの皮膚透過量や総透過量に占めるBPの割合は個体間で著しく変動した。透過実験終了後、各皮膚検体について角層重量や角層中DBP量、皮膚内CES2量を測定するとともに、透過実験とは別個に皮膚ホモジネートを作成し、DBPの代謝活性も評価した。これらの測定値にも大きな個体差が確認されたが、データ数が少なく、各測定値間の相関関係を明らかにすることはできなかった。今後もデータの蓄積が必要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初はDBPのヒト皮膚内代謝と経皮吸収挙動を十分に把握した上で、CES2阻害実験を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大抑制を目的とした緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の発令により、ヒト皮膚の入手や実験の実施に制約が生じた。実験方法は確立することができ、実験データは蓄積しつつある。しかし、代謝および吸収挙動の大きな個体差を把握するには、データ数は不十分であった。それに伴い、CES2阻害実験にまでは至らなかった。今後データ数を増やして実態把握に努めるとともに、CES2阻害実験を行い、フタル酸エステルの経皮吸収におけるCES2の機能解析を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の進捗の遅れを取り戻すため、まずはDBPのヒト皮膚内代謝と経皮吸収挙動、皮膚内CES2分布のデータ数を蓄積する。データを統計学的に分析し、代謝と吸収の個体差の実態把握に努める。個体差を含めた代謝および吸収挙動を把握した後、CES2阻害実験を開始する。阻害剤の影響を統計学的に解析し、代謝と吸収におけるCES2の寄与を明らかにする。また、CES1阻害剤でも同様の実験を行い、CES1とCES2の違いを明確化する。今後もコロナ禍の影響が考えられるため、文献調査も進める。CES1およびCES2の特異的阻害剤や酵素活性に影響するCES1およびCES2の遺伝子多型について調査する。 以上のように、令和3年度はフタル酸エステルのヒト皮膚内代謝と経皮吸収におけるCES2の役割を明らかにし、個体差の原因究明の足掛かりとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究実施に制約を受け、物品費は予定額に達しなかった。また、研究の進捗もやや遅れており、論文の執筆にも至らなかった。学会も中止やオンライン開催、誌上開催となり、旅費の支出が発生しなかった。以上のことから、使用残額が生じることとなった。 次年度使用額は試薬類、機器類等の消耗品や成果発表のための国内旅費、学会参加費に組み込む予定でいる。
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