2020 Fiscal Year Research-status Report
パキスタン系ムスリム移民社会における「強制結婚」:ノルウェーの事例研究
Project/Area Number |
20K12324
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
小牧 幸代 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20303901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パキスタン / ノルウェー / ムスリム / 移民 / 強制結婚 / イトコ婚 / NGO |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の1年目である2020年度は、これまでの調査で収集した「オスロのパキスタン系移民社会」「マンチェスターのパキスタン系移民社会」「パキスタンのリトル・ノルウェー地区」「日本のパキスタン系住民」に関するデータの整理と分析をおこなうとともに、インターネットや文献資料を通じて、最新の関連情報を収集した。その結果、英語圏と非英語圏におけるパキスタン系移民の間には、母国での出身地域や民族的・カースト的なカテゴリー、職業・教育レベルに大きな違いが見られることが分かった。また、労働者として移動したのか、それとも留学生・技術者・専門職として移動したのかという違いが、移民社会の内部での交流状況にも影響を与えていることがデータと文献資料の両方から分かった。こうした条件が、第2世代の結婚とどのように関係しているかを、今後の現地調査で明らかにしていく必要がある。 海外での現地調査は、新型コロナウィルスの世界規模での感染拡大のため実施できなかったが、データの整理と分析を当初の計画よりも早く進めたことで、3本の論文を執筆し公表することができた。それらは「ムスリム女性と現代アート:マンチェスター大学ウィットワース美術館の企画展に関する一考察」「越境する『強制結婚』:ノルウェーのパキスタン系移民女性とNGO活動」「パキスタン系ムスリム移民の生活誌:オスロのリトル・パキスタンを中心に」である。 さらに、内外の研究者の学術論文だけでなく、政府機関やNGO団体が発行している各種の白書や報告書も参照し、それらを付き合わせることで、世界各地のパキスタン系ムスリム移民社会の現状把握に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画していた海外での現地調査は、新型コロナウィルスの世界規模での感染拡大のため実施できなかったものの、これまでに蓄積していたデータを整理し分析する作業が、当初の計画よりもかなり早く進んだ。その結果、研究期間の1年目から3本の論文を執筆し公表することができた。他方、現地調査に行くことができない時間を、文献研究やネット情報の収集ならびにSNSでの情報交換などに使うことができた。従って、コロナ後の現地調査に向けて着実に準備ができており、回数的には減少した現地調査の機会を効率的に使う段取りをつけている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究機関の2年目にあたる2021年度は、やはり新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、海外における現地調査は実現しない公算が高い。しかし、その時間をデータ整理とデータベース入力、文献研究、ネット情報の収集ならびにSNSでの情報交換といった作業に使うことで、2022年度以降の現地調査の効率と成果を最大限に高めたい。 2022-23年度は、ノルウェー(オスロ)と英国(マンチェスター)のパキスタン系移民社会で、コミュニティ調査とインタビュー調査(とくにニューカマーや女性・少女を対象とする)をおこなう。 2024年度は、オスロのNGO団体とのコラボ企画を通じて、研究成果が当事者に届くような形での公表をおこなう。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウィルスの世界規模での感染拡大のため、海外での現地調査を実施することができなかった。2021年度も、海外調査は難しいかもしれないが、海外渡航の禁止や自粛が終了し次第、速やかに調査に取りかかることができるよう、文献資料や調査機材の購入を計画よりも早い段階で進める。
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