2023 Fiscal Year Research-status Report
パキスタン系ムスリム移民社会における「強制結婚」:ノルウェーの事例研究
Project/Area Number |
20K12324
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
小牧 幸代 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20303901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パキスタン / ノルウェー / ムスリム / 移民 / 強制結婚 / ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の4年目である2023年度は、これまでの調査で収集したデータの整理と分析をおこなうとともに、インターネットや文献資料を通じて最新の関連情報を収集した。同時に、ノルウェーでの現地調査も実施した。具体的には、まず、オスロでムスリム移民女性のエンパワーメントを推進するNGOで、新型コロナが猛威をふるっていた期間中の活動についてインタビュー調査をしたり、NGOの刊行物(書籍や冊子など)を購入したりすることで、パキスタン系をはじめとするムスリム移民女性の、ここ数年の様子に関する情報収集に努めた。次に、昨年度に実施した関東地方のパキスタン系移民社会における葬送儀礼に焦点をあてた参与観察とインタビュー調査の成果を踏まえ、オスロでも同様の調査に着手した。移民の葬送儀礼は、トランスナショナルな性格をもつという先行研究がある。確かに、日本でもノルウェーでも、葬送儀礼は国境を越え、パキスタンの親族を巻き込んで実践されており、婚姻儀礼との共通点が多い。パキスタン系移民の強制結婚の背景を理解するためには、ノルウェーで暮らす移民とパキスタンで暮らす親族の両方を巻き込む冠婚葬祭の全体を見ていく必要がある。そこで、オスロ中央駅に隣接するリトル・パキスタン地区において、パキスタン系ムスリム移民男性が経営する葬儀会社でインタビューをしたり、同葬儀会社による墓地およびモスクでの葬儀を観察させてもらったり、許可を得て葬儀の様子を動画撮影させてもらったり、遺族にインタビューをさせてもらったりした。さらに、オスロ市が管理する20カ所の公営墓地のうち、ムスリム向けの区画を擁する4つの墓地を含む12の墓地と、隣県のムスリム向けの区画を擁する1つの墓地で調査をおこなった。墓碑に刻まれた情報を分析し、今後のインタビュー調査につなげることで、結婚移民のひとりひとりの「物語」を知ることができるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で断念していたノルウェーでの現地調査は、2023年度の夏季休暇中に、非常に充実したかたちで実現した。これまでに蓄積してきたデータを整理し分析する作業や文献研究、ネットでの情報収集ならびにSNSでの情報交換も、効率よくできている。婚姻儀礼と葬送儀礼という、トランスナショナルな人生儀礼の調査も、日本とノルウェーとパキスタンという複数の国を結びつける研究に発展しそうである。以上から、2024年度に実施するノルウェーでの現地調査・成果報告に向けて、準備は着実に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究の主要な部分を海外での現地調査・資料収集が占めているため、これまでは様々な制限・制約があり困難を極めた。だが、2023年度は海外調査も再開できた。今後は、引き続き文献資料とネットでの情報収集をおこないつつ、海外の現地調査にかかわるインフォーマントとの連絡もこれまで以上に密にして調査活動と成果報告の準備を本格化する。具体的には、2024年度はオスロのパキスタン系移民社会でコミュニティ調査とインタビュー調査をおこなう。また、オスロのムスリム移民女性のエンパワーメントを支援するNGOのスタッフとの意見交換を経て、研究成果が当事者に届くような形での公表のあり方について検討を重ねる。
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Causes of Carryover |
2022年度は、国内のパキスタン系移民社会での調査を最優先したため、海外での現地調査を十分に実施することができなかった。2023年度は、夏季休暇期間に比較的長期の海外調査をおこなうことができたが、コロナ禍で実施できなかった海外調査費が残っているかたちである。有効に使用して成果をあげるため、2024年度もノルウェーで現地調査を実施する計画である。
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