2021 Fiscal Year Research-status Report
The politics of securitization and desecuritization of "boat people" in Australia
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20K12351
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
飯笹 佐代子 青山学院大学, 総合文化政策学部, 教授 (30534408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 真弓 名古屋商科大学, 国際学部, 教授 (20259344)
加藤 めぐみ 明星大学, 人文学部, 教授 (30247168)
山岡 健次郎 香川高等専門学校, 一般教育科(詫間キャンパス), 准教授 (10584394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オーストラリア / ボートピープル / 難民 / 安全保障化 / 境界 / 難民文学 / 難民アート / 多文化社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
メンバーによる計3回の研究会を、2021年9月1日、12月11日、2022年3月16日にオンラインで実施した。9月にはゲスト講師として栗田梨津子氏(神奈川大学)を招き(報告テーマは「オーストラリア都市部の非白人系住民による新たな市民意識の形成-先住民と難民の関係に着目して」)、意見交換を行った。 飯笹はオーストラリアのボートピープル問題に関する新たな文献・資料の精査を行いつつ、シドニーを含む世界各地で難民問題を提起するアクティヴィストでありアーティストであるアイ・ウェイウェイの活動とそれらに対する各界からの評価や批判から、アーティスト/アートの可能性と課題について考察した。 鎌田は、「難民の『安全保障化』を考える:タンパ号事件と対『ボートピープル』政策―アジアに近接するオーストラリアの’anxiety’」と題して9月の研究会で報告を行った。また、難民・避難民との日常空間の共有体感に関して、陸続きの国境を持つ欧州諸国と、島大陸オーストラリアとの違いについて考察を行った。 加藤は、難民受け入れ側の言説の背景にある鍵概念としての「アジール」について、1950年代から近年までの文献を基に整理し、また難民側による人種差別への文学的対抗言説をWinnie Dunn et. al. eds., Racism: Stories on fear, hate & bigotry (2021)及びMaxine Beneba Clarke, The Hate Race: A Memoir (2016)により分析した。 山岡は、「『地表の権利』を行使するーグローバルな難民移動が作り出す境界領域」と題して12月の研究会で報告を行い、オーストラリアにおける「境界領域」をめぐる現状についても分析した。また、日本平和学会における自著『難民との友情ー難民保護という規範を問い直す』(明石書店、2019年)に関する分科会において日本の難民研究について議論を提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染拡大の影響により、昨年度に続いて各メンバーとも予定していたオーストラリアでの現地調査を実施することができず、入手し得る文献・資料・映像等を最大限に活用しながら研究を進めざるを得なかった。2年間にわたって渡豪できなかったことで、研究の進捗に少なくない支障をきたしていることは否めず、今後の挽回を期したい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、各メンバーはそれぞれのディシプリンの方法論に基づき以下を中心に研究を進め、計3回程度の研究会を設けて最新の研究成果を共有し、議論を通じて研究の深化を図る。必要に応じて関連分野の専門家をゲストスピーカーとして招聘する。また、新型コロナの感染状況が改善すればオーストラリアでの現地調査を実施する。 飯笹は、「ボートピープル」問題に対する世論の動向や抗議活動に注目するとともに、引き続き難民問題に関わるアーテイストの具体的な活動について考察を進める。渡豪が可能ならば、シドニーの「難民アート・プロジェクト」等について調査を行う。加えて、研究全体の総括を行う。 鎌田は、難民支援団体を中心としたオーストラリアにおける「難民観」を精察する。また、難民支援団体が標榜するような難民の多文化社会への包摂とはやや異なり、より「共感」に基づく立場からボートピープルに関わる先住民組織やアーティストの動向を現地にて調査する。 加藤は、「排斥言説」に対抗するオーストラリア文学の「歓迎言説」と、その表層性の問題を、Michelle de KretserのThe Life to Come (2017)をもとに考察する。また文学者によるアクティヴィズムの実践について「アジール」概念との関連に着目しつつ、Janet GalbraithやArnold Zableにインタビューを行う。 山岡は、グローバルな難民移動が作り出す「境界領域」について理論的に整理し論文執筆を行う。さらに、戦後オーストラリアにおける難民受け入れの起源となったボネギラ移民収容所に関する現地調査を実施し、収容所の政治的意味について歴史的に考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大の影響により、昨年度に続いて各メンバーとも予定していたオーストラリアでの現地調査を見送らざるを得なかったため。次年度は感染状況が改善されれば、各メンバーともシドニー、メルボルン、キャンベラを中心に現地調査を行うこととしたい。
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Research Products
(5 results)