2023 Fiscal Year Annual Research Report
米国のオルトライトの世界的展開に関する民族誌的考察
Project/Area Number |
20K12352
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡辺 靖 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (70317311)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカ / オルトライト |
Outline of Annual Research Achievements |
米国のオルトライトの影響が強く及んでいる欧州の代表事例として2023年9月にイタリアへの現地ヒアリングを行った。周知の通り、イタリアでは近年、極右勢力が台頭しているが、移民問題や経済問題などを抱えている点では米国と類似しており、それゆえにオルトライトが浸透しやすくなっている。具体的には欧州大学院大学(EUI)、ローマ・サピエンツァ大学、国際政策研究センター(CeSPI)、シエナ大学の専門家にヒアリングを行った。 また、11月にはトロント(カナダ)で開催された米国人類学会(AAA)の年次大会に参加し、グローバリズムとネオリベラリズム、レイシズムの関係、過激主義の台頭と対策に関して最新動向を確認すると同時に、研究者のネットワークを拡大することができた。この大会への参加を通してオルトライトをより広義の過激主義の一つとして捉え、他地域の過激主義との比較、そしてその対策から新たな研究テーマの模索ができるのではとの確信を持つようになった。 それゆえ、2024年1月にはジャカルタ(インドネシア)を訪れ、イスラム過激主義の動向と対策についてワヒド財団、平和記念財団(YPP)、ハビビーセンター、平和記念クリエイティブ(KPP)などへのヒアリングを行い、極めて有益な示唆を得ることができた。 オルトライトは自国第一主義的な外交政策を支持しているが、米共和党のドナルド・トランプ氏のそれと親和性も高い。そうした内向きのナショナリズムの影響を最も受けやすい地域として、2024年2月には台北(中華民国)を訪れ、台湾智庫や台湾国立政治大学国際関係研究所などへのヒアリングを行った。また、3月には韓国を訪れ、韓国国立外交院や世宗研究所アメリカ研究センターなどへのヒアリングを行った。オルトライト的な世界観の行く末を考察する上で、リアルな感覚を掴むことができ有益だった。
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