2021 Fiscal Year Research-status Report
2010年代日本の対アフリカ政策~「反応」から「戦略」への転換を検証する
Project/Area Number |
20K12383
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
白戸 圭一 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (30822738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手上 和代 明治学院大学, 国際学部, 講師 (00838435)
高橋 基樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (30273808)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / 援助 / 投資 / 日本外交 / 製造業 / 開発 / 企業 / ものづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第5回アフリカ開発会議(TICADⅤ)が開催された2013年ごろから顕在化してきた日本の対アフリカ政策の質的な変化に着目し、新たな政策の特質と、日本・アフリカ関係の変化を分析することを目的としている。同時に、日本をはじめとするドナー諸国による対アフリカ経済支援の結果として、アフリカ諸国の産業発展にどのような変化が生じているかまでを視野に入れ、フィールド調査も実施してきた。 これらの目的を達成するために、研究代表者の白戸は1993年のアフリカ開発会議(TICADⅠ)が企画・実行された経緯についてヒアリング並びに外交資料を用いて調査し、2020年7月から8月にかけてその成果を後述する媒体に発表した。さらに2022年4月に研究成果を英語論文として発表した。 また、白戸は英国の大学で日本の対アフリカ政策について研究している研究者や、日本政府のアフリカ連合(AU)政府代表部の外交官らと2021年度中に面談を繰り返し、2022年度中にエチオピア、ガーナ、ケニア等に渡航し、日本・アフリカ関係の進展と変化についてアフリカ側の政治家らにインタビューする準備を進めた。 研究分担者の高橋は、日本政府による対アフリカ経済支援がもたらすインパクトについて考察するために、グローバリゼーションが進む中でのアフリカ諸国における産業発展に関する理論と実証の両面での研究を継続し、英語による書籍を編集して研究成果を国際的に発信した。 同じく研究分担者の井手上は、高橋を中心として編集された英語書籍において、ケニアにおけるソファ製造業者らのグローバル化への対応、ドナー国による対アフリカ支援が彼らに与えた影響に関する論文を発表してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も新型コロナウイルス感染症が世界各国で猛威を振るい、本研究が対象とするアフリカ地域においても感染の拡大がみられ、アフリカへ渡航してフィールド調査やインタビュー調査を実施することが事実上不可能な状況が続いた。 また、2020年度と同様に、日本国内においてもデルタ株の拡大による2021年夏の医療崩壊等の緊迫した状況があったことにより、研究代表者の白戸が計画していた外交官OB等へのインタビューの実施が困難になった。外交官OBはいずれも高齢であり、新型コロナに感染した場合の重症化リスクが高いことから、対面によるインタビューで証言を得ることは現実には不可能である。Zoom等を活用したリモートによるヒアリングも、高齢者の場合はソフトのインストールや操作に不慣れであり、加えて秘匿性の高い外交案件に関する重要な事実をリモートで証言することへの抵抗感等から、インタビュー計画が当初の計画通りには進展しなかった。 ただし、そうした中でも、現職外交官、日本・アフリカの外交関係に関する研究者、日本企業関係者らとの面談は実現し、貴重な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、新型コロナ感染症に対応したワクチン接種が日本国内で急速に普及し、治療薬等も普及してきた。この結果、2022年度は日本国内における退職外交官へのインタビューが再開できる見通しになってきた。加えてアフリカ諸国においても「ウィズ・コロナ」の方向に政策が舵を切りつつあり、海外渡航制限も大幅に緩和されてきているため、フィールド調査も再開する計画である。 まず、2022年8月末には、チュニジアで第8回アフリカ開発会議(TICADⅧ)が開催予定である。研究代表者の白戸はこれに合わせてチュニジアに渡航し、会議出席者らに集中的なヒアリングを試みることを計画している。 次に日本外務省の現職外交官、退職外交官の双方へのヒアリングを精力的に行い、2010年代の対アフリカ政策の形成、変化についての証言を集める。さらに情報公開制度を駆使した外交文書の開示作業を集中的に行い、ヒアリングで得られた証言の信ぴょう性を文献面から補完する。2022年度末には、これら一連の調査結果を分析、整理した論文を発表する。 また、研究を開始した当初は想定していなかったことではあるが、研究分担者である高橋と井手上の精力的な調査研究により、ケニアを中心とするアフリカ諸国の製造業現場に関する各種の貴重なデータが蓄積されるという成果があった。本研究の第一義的目的である日本の対アフリカ政策の変化に関する考察とは直接的関連は薄いものの、近年のアフリカ社会の様々な変化を検証するうえでは貴重な成果である。よって、これらの成果については、当初の「日本の対アフリカ外交・政策」に関する成果発表とは別の形で、精力的に論文化・書籍化をしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の流行が継続したことにより、当初計画していたアフリカ諸国へのフィールド調査が事実上不可能になった。また、日本外務省の退職外交官らに対するヒアリング調査も実施が困難になった。このため当初の計画で使用を想定していた旅費が執行不可能になり、次年度使用額が生じた。 2022年度における使用計画としては、世界各国で入国規制が緩和されたことにより、ガーナ、エチオピア、ケニア等へのフィールド調査が可能と思われるため、旅費として使用する。退職外交官に対するヒアリングも再開するため、その旅費としても使用する計画である。
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