2022 Fiscal Year Research-status Report
2010年代日本の対アフリカ政策~「反応」から「戦略」への転換を検証する
Project/Area Number |
20K12383
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
白戸 圭一 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (30822738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井手上 和代 明治学院大学, 国際学部, 講師 (00838435)
高橋 基樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (30273808)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本外交 / TICAD / アフリカ / 開発援助 / 貿易投資 / 安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第5回アフリカ開発会議(TICADⅤ)が開催された2013年ごろから顕在化してきた日本の対アフリカ政策の質的な変化に着目し、新たな政策の特質と、日本・アフリカ関係の変化を分析することを目的としている。 研究代表者の白戸は1993年のアフリカ開発会議(TICADⅠ)が企画・実行された経緯について、元国連職員で現在はアフリカ連合の顧問を務めている人物や、経済協力開発機構(OECD)の日本政府代表部の元大使など、2000年代~2010年代の日本の対アフリカ外交を担った人々に詳細なヒアリング調査を行った。また、現職の外交案に対しても精力的にヒアリングを実施し、2022年9月にはエチオピアに渡航し、アフリカ連合日本政府代表部の大使とも面談した。このほか複数の現職外交官に対しても、対アフリカ外交に関して精力的にヒアリング調査を実施した。 これらのヒアリング調査の結果については、アジア経済研究所が発行する『アフリカレポート』に論文として発表したほか、2022年8月に開催された第8回アフリカ開発会議に合わせて毎日新聞出版が発行する『週刊エコノミスト』や、新潮国際情報サイト「フォーサイト」などに論考を執筆し、研究成果の社会への還元に努めた。 なお、本科研費は1年間の延長が認められたため、OECDの元大使に関しては2023年度も引き続き複数回にわたってヒアリングを実施する予定にしており、本人の同意を得ている。また、2023年度中に、安倍晋三政権時代に総理大臣官邸内において対アフリカ外交に携わった元政府高官らへのヒアリングについても準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、退職した日本の外交官OBを中心に対アフリカ外交の軌跡についてヒアリングするオーラルヒストリー研究の一環である。このため新型コロナウイルス感染症が拡大している状況下では、外交官OB等へのインタビューの実施が困難になった。外交官OBはいずれも高齢であり、新型コロナに感染した場合の重症化リスクが高いことから、対面によるインタビューで証言を得ることは現実には不可能であった。Zoom等を活用したリモートによるヒアリングも、高齢者の場合はソフトのインストールや操作に不慣れであり、加えて秘匿性の高い外交案件に関する重要な事実をリモートで証言することへの抵抗感等から、インタビュー計画が当初の計画通りには進展しなかった。 しかし2022年度は、新型コロナ感染症に対する人々の認識に変化がみられ、日本政府の対応策にも変化が生じた。この結果、海外渡航が再開したり、外出制限等も緩和されたことにより、アフリカ連合本部があるエチオピアへの渡航も実現し、ヒアリングが可能になった。また、外交官OB等へのヒアリングもある程度まで再開できた。この結果、複数のヒアリングが実現し、2021年度に見られた研究の遅れを大幅に挽回できることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本政府の新型コロナ感染症に関連する施策の変化により、2023年度は日本国内における退職外交官へのインタビューは本格的に再開、継続が可能な状況となっている。 2022年8月末、チュニジアで第8回アフリカ開発会議(TICADⅧ)が開催された。当初はこれに合わせてチュニジアに渡航し、会議出席者らに集中的なヒアリングを試みることを計画していたが、会議主催者の日本政府は出席者を大幅に制限したため、会議に合わせたヒアリングは不可能になった。このため研究の進め方を柔軟に見直し、日本国内で現職外交官、退職外交官の双方へのヒアリングを精力的に行い、2010年代の対アフリカ政策の形成、変化についての証言を集めることに集中することとした。2023年度もその作業を継続する。 また、2022年度後半時点で、対アフリカ外交に関するいくつかの非公開文書を入手できる見通しが立ったことから、2023年度はこれらの文書の内容分析を進め、ヒアリングで得られた情報との突き合わせを進める。
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Causes of Carryover |
本研究は、退職した日本の外交官OBを中心に対アフリカ外交の軌跡についてヒアリングするオーラルヒストリー研究の一環であるため、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況下では、外交官OB等へのインタビューの実施が困難になった。外交官OBはいずれも高齢であり、感染した場合の重症化リスクが高いことから、対面によるインタビューが実現しなかった。このため2022年度中の旅費交通費の予算執行が不可能となるケースが生じた。 2023年度は日本国内における退職外交官へのインタビューは本格的に再開、継続が可能な状況となっていることから、インタビューに出向く際の旅費交通費として予算を使用する計画である。また、インタビューで得られた証言の裏付けに必要な資料を外交史料館等で取得する際の必要経費(コピー代、交通費等)や、情報を整理する際に雇用するアルバイトへの謝金等に予算執行する計画である。
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