2020 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮半島の植民地遊廓の形成・展開・変容~解放後韓国への連続/非連続に注目して~
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20K12454
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
金 富子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40558102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 圭木 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (40732368)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遊廓 / 公娼制 / 釜山 / 植民地遊廓 / 貸座敷 / 性売買 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年である2020年度は、植民地都市ごとの遊廓の形成と展開に関して訪朝調査と訪韓調査をそれぞれ分担して行う予定であったが、コロナ禍の感染拡大のため実現できなかった。そのため、各自が文献調査を行いつつ、共同研究に関しては以下を行った。 まず、1876年に開港した釜山にどのように日本式遊廓が上陸・展開したのかに関して、韓国在住の梁美淑氏が執筆した韓国語論文「開港期から1910年代、釜山における遊廓の導入と定着の過程」を日本語に全訳した。朝鮮初の開港地である釜山への貸座敷の導入と遊廓(佐須土原、1902年、後に緑町に移転)の成立は、朝鮮にはなかった公娼制の移植であった。この論文は監訳したうえで、本科研の成果をふまえて刊行予定の論文集に収録する予定である。 次に、同論文の著者である梁美淑氏を講師に招き、2021年3月にオンライン・セミナー「釜山における日本式遊廓の導入と定着~開港期から1910年代を中心に~」を同時通訳によって開催した。梁氏は、地図や写真、画像をまじえて詳細な報告を行った。コメンテーターは近代日本公娼制研究の人見佐知子氏、植民地期の朝鮮北部地域研究の加藤圭木氏(研究分担者)がつとめ、参加者は近現代日本の遊廓や性売買研究者が多かったため、活発な議論がたたかわされた。 以上のように、本研究のテーマである植民地遊廓の始発点となった釜山の日本式遊廓の形成・展開過程に関して詳細に把握できたこと、韓国の公娼制研究者と交流できたことは、今後の共同研究の展開に資するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
訪朝・訪韓して植民地遊廓に関する現地調査を行うという最大の目的は、コロナ禍の感染拡大により渡航ができず、中止せざるを得なかった。ただし、次善の目的である朝鮮初の開港地・釜山への日本式公娼制の導入過程に関しては、韓国の研究者の論文を翻訳し、講師に招いてオンライン・セミナーを開催し、意見交換や研究交流を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ禍の感染拡大が続いており、訪朝調査・訪韓調査に関しては、見通しが立たない状況である。その代替策として、各自の担当地域に関する文献調査を引き続きおこなったうえで、1)植民地期の性売買を語る上で欠かせない妓生研究に関して、2)釜山以外の朝鮮半島南部の植民地都市における遊廓形成と解放後の性売買に関して、該当論文を翻訳したうえで、講師に依頼してセミナーを開催することで、研究を進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
訪朝・訪韓して植民地遊廓に関する現地調査を行うという所期の計画は、コロナ禍の感染拡大により渡航できず中止せざるを得なかった。そのため、最大の支出金額になる予定だった旅費を使うことができなかった理由による。
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Research Products
(6 results)