2022 Fiscal Year Research-status Report
A Corpus-Based Critical Discourse Analysis of the Representation of Sexual Minorities
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20K12474
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
吉本 圭佑 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (90724477)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 同性婚 / 性的マイノリティ / コーパス言語学 / 批判的談話(言説)分析 / CDA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新聞や国会会議録をデータベース化したコーパスを用いて、セクシュアルマイノリティ(性的マイノリティ)の描かれ方の特徴やその変化を定量的・定性的に分析することである。特に、英語圏における同性結婚の法制化や、日本における同性パートナーシップ制度の導入の前後でそれらがどのように変化したのかを、批判的談話分析(Critical Discourse Analysis; CDA)の質的調査方法と、コーパス言語学の統計的な手法を併用しながら分析する。
前年度(2021年度)は、前年度に作成した英国の上院(貴族院)の会議録を電子データ化したコーパスを用いて定量的な分析を行なったが、データ自体が小さかったためか、反対派に顕著な言語的な特徴を見つけるには至らなかった。今年度(2022年度)は日本の国会議事録をもとにデータを作成したが、同性婚に賛成派の質問の量に対し、それに答える側(反対派)の答弁の量が少なく、かつその内容が回避的・抽象的であるため、両者の定量的な比較をすることが難しいとの結論にいたった。
定性的な分析においては、同性婚に反対の意見には、家父長制を中心とする「イエ」制度を維持したいとの考えが背後にあり、それが固定的なジェンダー役割の考え方につながっていること、また、そうした考えは同性婚だけではなく、選択的夫婦別姓に関する議論等にも広く見られることがわかった。また、同性婚に反対派の意見には「子どもの福祉」という表現が多く用いられており、これは現在子育てをしている同性カップルの存在を無視しているという問題に加え、固定的なジェンダー役割に則った子育てのあり方の押し付けに繋がりかねない問題を孕んでいると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画書では、最初に英国議会のコーパスを作成し、次に日本の国会議事録をもとにコーパスを作成する予定であった。コーパス自体は作成したが、作成に多大な時間を費やした割には、定量的な分析結果から見えてくるものが少なく、定性的な分析だけにとどまってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は在外研究で英国のランカスター大学で研究を進めている。コーパスを用いた批判的言説分析の専門家であるベイカー教授の指導のもと、国会会議録のデータはひとまず保留して、新聞をもとにデータを作成している。具体的には読売新聞(ヨミダス歴史館)からダウンロードしたデータ(渋谷区パートナーシップ証明がはじまった2015年以降の記事)をテキストファイル化したものと、朝日新聞(朝日新聞クロスサーチ)からダウンロードしたデータをテキストファイル化したものを比較し、両者に顕著な語(keyword)の抽出とその前後の文脈(collocation)の分析を通じて、テキストマイニングを行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため多くの学会がオンライン開催となり、旅費として計上していたものを執行しなかったことにより次年度使用額が生じた。
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