2020 Fiscal Year Research-status Report
Platform Governance for Fair Scholarly Communication
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20K12546
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
三根 慎二 三重大学, 人文学部, 准教授 (80468529)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学術情報流通 / 学術コミュニケーション / プラットフォーム / プレプリントサーバ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,制限的な状況下でも実施可能な①商業出版社の業績調査,②プレプリントサーバに関する調査,③日本の大学図書館の所蔵図書の調査の3点を実施した。 商業出版社の業績調査に関しては,RELXグループ(Elsevier)を対象に過去20年分の有価証券報告書(Form10-KおよびForm20-F)を入手し詳細の確認を行った。その結果,収入および純利益双方が増加傾向にある,近年は最大収益率も37%前後を維持している,Scientific, Technical & Medical部門が中心である,フォーマット別では紙から電子への大幅なシフトが見られることがわかった。 プレプリントサーバに関する調査では,化学分野のプレプリントサーバであるChemRxivを対象に,2017年8月から2020年8月の期間に登録された全プレプリント約5700件の分析を行った。登録数,登録分野,登録者(異なり数,国),プレプリントの学術雑誌掲載タイトル,学術雑誌掲載率・網羅率などについて集計を行うと共に,主成分分析を行うことで登録プレプリントの特徴を明らかにし,成果公表(学術雑誌論文)に着手した。 日本の大学図書館の所蔵図書の調査に関しては,予備調査として,日本図書館協会の「日本の図書館統計 統計と名簿 統計編(大学)」を2000年から2019年の期間にわたって入手し,大学図書館の図書の所蔵状況を業務統計および個々の大学図書館レベルで明らかにすることを試みた。紙の図書に関して,蔵書冊数(全体および洋書),受入図書冊数受入計(全体および洋書),受入図書冊数うち受入購入(全体および洋書)ほか計35項目の集計を行った。受入図書冊数うち受入購入は,大規模大学・研究志向大学では一定数の購入がなされているが,大学全体では過去20年で43%減と大幅な減少が見られることなどがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時には予想不可能な状況が生じ研究遂行に支障があったものの,多くの調査は電子的に入手可能な文献やデータに基づいて単独で実行可能なものであったため,当初予定していた多くの調査に着手し遂行することができた。一方で,多数の学生アルバイトを必要とする所蔵調査に関しては,学内でのアルバイト募集をかけることが困難であったため,当初予定していた個別図書レベルでの所蔵調査に取りかかることができなかった。しかし,代替の調査として,図書館統計を分析することで,結果として異なる側面から所蔵状況の一端を明らかにすることができた。以上のことから,概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,既に着手している①商業出版社の業績調査,②プレプリントサーバに関する調査,③日本の大学図書館の所蔵図書の調査については,継続して調査を実施する。業績調査に関しては,RELX以外の大手国際商業出版社(Wiley,Springer-Natureなど)も対象に,同様の枠組みで調査を行い,比較分析を行う。プレプリントサーバに関する調査は,基本的な分析は終了したので,論文投稿を行う。所蔵調査に関しては,業務統計の分析はさらに分析を進めると共に,新たな調査として図書を対象とした所蔵状況調査行う。主要プラットフォームの発展およびそれらのエコシステム・ガバナンスに関する調査に関してはまだ未着手であるため,電子ジャーナルプラットフォームを手始めに,各プラットフォームのサービス・デザインの変遷および補完的サービスとの連携状況(エコシステム)の調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス流行により対外活動が制限されたため,一部研究計画を変更することで予算執行の組み替えを行ったが,当初予定した旅費・謝金を執行することが全く出来なかった。次年度も不確定な部分はあるが,クラウドソーシングの利用や(オンライン)学会での発表を行うことで,次年度繰り越し分の執行を行う予定である。
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