2020 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative analysis of developmental neurotoxicity due to embryonic exposure of pesticides
Project/Area Number |
20K12621
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
吉田 祥子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40222393)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穂積 直裕 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30314090)
田村 和輝 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 助教 (40822614)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 発達神経毒性 / プルキンエ細胞 / 深層学習 / ミクログリア / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度には、テーマ1. 動物を用いた多面的な神経発達状況の観察として、グリホサート(GLY) 、アセタミプリド(ACET)、クロルピリホス(CPF)、リポポリサッカリド(LPS)の胎児期への急性投与または慢性投与を行い、その結果を観察した。高濃度のGLY投与では、神経死の進行および神経発達の抑制が見られたが、低濃度慢性GLY投与では、むしろプログラム神経死の抑制が見られた。CPF、ACET投与でもプログラム神経死の抑制と神経樹状突起発達の抑制が観察された。LPSでは、生後1週では神経死の抑制、生後2週では神経死の進行という二相性の変化が観察された。神経死の増加とミクログリア の増加は必ずしも一致せず、ミクログリア の増加と強く相関を示したのは樹状突起発達の抑制だった。これらの結果は、炎症性サイトカインの上昇と部分的にしか一致せず、むしろエピジェネティックな変化が発達に伴って進行すること、異なる物質による発達神経毒性が、一定のルールに従った変異を示す可能性を示唆した。テーマ2.機械学習を利用した特徴抽出の試行では、MATLAB の machine learning toolboxを用いた画像認識システムを構築した。 従来の共焦点顕微鏡を用いた神経細胞観察では、細胞死や樹状突起長などの小さな構造変化を定量化することは困難であったが、これまでの発達神経毒性物質の投与で得た神経細胞の抗体染色画像 約 4000 枚を読み込み、神経細胞の自動識別が可能となった。これは神経細胞(プルキンエ細胞)の形態的な特徴に基づいた抽出であるため、神経毒性物質によって本来ではない場所に分布している細胞や形が大きく変化している細胞に対しても有効な抽出結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
濃度の異なる達神経毒性物質による神経異常の観察が予定以上に進行し、一部エピジェネティックな変化の観察まで進めることができた。また、発達神経毒性物質投与によって活性化されたミクログリア を単離し音響観察することにも進めることができた。これらは令和3年度に予定していた研究を含んでいる。さらにコロナ感染の拡大で研究を進めにくい状況下ではあったが、画像の深層学習システムが概ね構築できた。 今年度の結果から、発達神経毒性は単なる炎症性サイトカインによる神経死がもたらすものではなく、低濃度・発達初期ではアストロサイトの分化が誘導されて過剰な神経保護による発達障害が、高濃度・発達中期では樹状突起発達の抑制と神経死の誘導が、それぞれ進行するのではないかという仮説を得ている。例えばCPFの投与はミクログリア 増加と樹状突起発達抑制をもたらすが、神経死には至らず、むしろ過剰な神経保護作用を示す。ミクログリア は近年BDNFの主たる生成源であるとされ、BDNFによる樹状突起発達抑制が報告されているが、本研究でも共同研究者の諫田により、CPF投与によるBDNF発現増大を観察している。これらの樹状突起発達に関わる変化を深層学習によって定量化を図る。
|
Strategy for Future Research Activity |
発達神経毒性について、低濃度・発達初期ではアストロサイトの分化が誘導されて過剰な神経保護による発達障害が、高濃度・発達中期ではミクログリアによる樹状突起発達の抑制と神経死の誘導が、それぞれ進行するのではないかという仮説を得ている。これを証明するには、化学物質が発達中の神経系に引き起こすエピジェネティックな変化の観察、生きたミクログリアを用いた化学物質による活動性の変化の観察が必要になる。現在いn vivoで小脳を中心に観察しており、計画では令和3年度は海馬歯状回の観察に進む予定だが、小脳のエピジェネティックな変化の観察を優先させる。またin vitroではミクログリアの観察を行っており、cell line化したミクログリアを合わせて観察する可能性がある。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染拡大に伴い、出張旅費がほとんど発生せず、余剰分が生じた。
|
Research Products
(9 results)