2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of detecting system for lumbar spondylolysis using vibration signal analysis.
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20K12696
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
渡邊 裕之 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (40348602)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腰椎分離症 / 腰椎分離モデル / 骨叩打信号 / Wavelet解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は腰椎分離症に対して腰椎棘突起より骨叩打信号を与え、脊椎内を反射受波した信号を採取・解析することにより腰椎分離症の有無を判別する診断補助装置を開発することである。本研究では人工骨にて作成した腰椎分離症モデルを用いて機器の精度をWavelet解析(時間周波数解析)を用いて検証した。その結果、叩打後45~70msecの期間にある100Hz前後の帯域で健常者では高信号の検出が認められているのに対して、腰椎分離症では同様の高信号が消失することが認められた。その後、複数個の人工骨モデルを用いて腰椎分離症の特徴的な周波数特性であることを確認した。本研究以前の段階ではWavelet解析ではなくFourier解析を使用していたため、反射受波した信号の総体的な解析結果であったが、骨折部を通過した時点での信号を時間変化の中で算出することにより、腰椎分離症の検出感度が増大した。 しかしながら、画像所見等により腰椎分離症の存在は明らかではあるものの、同様の高信号が消失しない症例が認められた。また、解析結果の高信号の出現の有無が混在する結果を示す症例も観察されたため、改めて人工骨モデルによる検証を行った。人工骨モデルによる結果の再現性は、腰椎棘突起にあてる叩打装置の先端部分の角度変化により解析結果に差を生じさせることが判明した。得られた振動信号に対する解析手法には問題はないが、叩打信号を脊椎に打ち込む叩打装置の設置角度が検出結果に影響を与えることが考えられた。 そこで人工骨を用いて脊椎棘突起にあてる叩打装置の角度を変えてさらなる検証をおこなった。叩打装置の設置角度の変化は反射受波する信号に影響を与えることが認められたものの、角度変化と信号の特性については一定の見解には至らず現在も検証が継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は腰椎棘突起に叩打し、反射受波した信号をWavelet解析することで骨折の有無を検出する診断補助装置を開発することである。現在までの研究ではFourier解析を用いていたため、骨叩打信号の時間変化に対応した解析が困難であったが、Wavelet解析を使用することにより骨折部の情報を有する信号帯域に特化した解析が可能となった。人工骨による腰椎分離症モデルでは、叩打後45~70msecの期間にある100Hz前後に骨折の情報と考えられる信号特性が観察された。従来のFourie解析では判別のための周波数帯域設定や信号強度の設定が困難であったが、Wavelet解析を導入することにより、判別のための閾値設定を行わなくとも高い感度で骨折の有無を判別することが可能と考えられた。 しかしながら、現状において骨叩打信号を生体に安定して与えることに困難が生じている。人工骨では骨叩打装置をクランプにて固定して行うため、常に安定した解析結果が得られていた。生体を対象とする場合は骨叩打装置が手持ちとなるため、叩打の際に極めて不安定な状況となる。また、手持ちによる不安定性は叩打を与える腰椎棘突起と接触する叩打装置との角度を一定に保つことが困難であった。人工骨による腰椎分離モデルでは発泡ウレタン樹脂に包埋させるため、生体と同様に腰椎を目視することは困難であるが、人工骨設置の際の位置関係から腰椎の位置を推定することが可能である。このため、生体に叩打する場合と比較しても再現性の高い叩打が可能となった。さらに叩打装置による腰椎棘突起への接触圧も影響している可能性が考えられた。解析結果の整合性の問題は、当初より予見されていたので問題はないが、安定して信号を採取するための方法についてはさらなる改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究段階においてWavelet解析による骨叩打信号の解析手法が確立したものの、叩打装置による安定した叩打信号の入力に問題が生じている。問題は骨叩打信号の入力時に叩打装置が腰椎棘突起に対して角度が一定でないこと、棘突起への接触圧が異なることが考えられた。この問題は人工骨による腰椎分離モデルでは比較的少ないものの、生体では散見される結果となった。 生体に骨叩打を行った際の叩打信号の入力による問題を解決する方法として、人工骨による再現性を改めて確認する。人工骨による腰椎分離モデルに対して、叩打装置の接触角度を10°単位で変化させ、その際に生じる周波数特性の変化や信号強度の変化について再度検証を行う。さらなる検証として、本研究では叩打信号の反射受波した信号の処理にWavelet解析を採用した。Wavelet解析は今まで用いてきたFourier変換に比較して感度の高い結果を示した。しかしながら、画像診断等による腰椎分離症の所見を有する患者に対して健常データと同様の結果を示す例が散見されたため、叩打装置を含むシステム上の問題解決に向けて信号処理による解析手法についても改めて検証の必要性を感じている。Wavelet解析に用いられる基底関数は現行でMorleyを用いている。Wavelet解析では数種の基底関数が存在し、解析対象となる信号にフィットした基底関数を用いるべきである。Morley以外の基底関数や基底関数の次数を変更させた際の解析結果についても合わせて検証を行う。 本研究では研究期間内にCOVIT19によるパンデミックが発生した。同時期に生体による骨叩打装置による信号の入力による検証を行っていたが、パンデミックにより生体のモデルを募ることが極めて困難となり、人工骨による検証が主体となった。研究期間を1年延長し、できる限り生体を用いた検証を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVIT19によるパンデミックから生体を対象とする検証が著しく困難であった。生体を対象とする検証が実施できないため、人工骨を用いた腰椎分離モデルを利用することが増えたが叩打信号の入力に関する問題解決が不十分となっている。1年間延長させて生体による検証を継続して行いたいと考えている。
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