2020 Fiscal Year Research-status Report
祈りによる徳の涵養に関する研究―東方教父オリゲネスと福祉共同体ベーテルを例に
Project/Area Number |
20K12821
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
梶原 直美 関西学院大学, 教育学部, 教授 (90310680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生き方 / 徳 / いのち / 他者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、人間の「徳」という側面をとらえ直し、その「徳」が、「祈る」という宗教的行為によって涵養され得るのかという問いを立て、それに応えることである。「徳」に注目したのは、変化に富み、多様性に対して肯定的に受け止める傾向が強くなってきた昨今、社会のあり方とともに人間のあり方も問われるなかで、人間の、主体としての内発的な性質に着目する必要性が認識されるからである。 2020年度は、この目的に向けておもに古代キリスト教思想家オリゲネスおよび、ドイツ国内で生じた福祉共同体「ベーテル」に関して、文献を用いた研究を行った。 オリゲネスについては、信仰者として敬虔に、研究者として真摯に生涯を送ったことで知られるが、彼が日々の歩みのなかで重視したのは祈りであったことから、彼の生涯や、それを支えていた祈りの様々な側面について、彼自身の理解を明示する試みをおこなった。また、「ベーテル」については、ナチス政権下でいのちの危険にさらされた、いわゆる「社会的弱者」と言われる人々に対し、その尊厳を見失わず、彼らを守ることを決意し、そのように行動した当時の施設長、ボーデルシュヴィング牧師の存在によってひろく知られているが、その精神はいまもその働きを理解し、そこで働く人々を中心に、具体的に継承され、具現化されている。これらの働きについて、文献や資料をとおして研究をおこなった。 ただし、今年度は文献研究を基本として、学会発表も予定していたが、COVID-19感染症拡大に伴って様々な活動が制限され、発表の機会は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症拡大に伴い、発表を予定していた学会の大会が延期となり、行われなかったため。また、感染症拡大に伴う本務校での業務量増大により、予定していた学会誌への投稿が、提出期限に間に合わなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症拡大の傾向が収束しない現在、ベーテルにおける現地調査の見込みは立っていない。ゆえに、今年度も、文献を中心的に用いて研究を行う。それらは、『宗教と倫理』等への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度は基本的な文献として洋書や資料を国外から取り寄せる予定であったが、COVID-19感染症拡大によって本務校での業務が想定外に過多となったため、それに及ばなかったことにより生じた。同時に、研究上の活動の効率化により、支出が当初計画より少額となった側面もある。これらの金額は次年度の研究活動に使用する。 使用計画としては、古代キリスト教思想家オリゲネスおよび福祉共同体ベーテルに関する内容を中心とした書籍、資料および研究上必要な物品の購入、国内外での学会発表の参加、学術論文作成のための諸経費として使用する予定である。
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