2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K12872
|
Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
西木 政統 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (90740499)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 最澄 / 円仁 / 天台宗 / 薬師如来 / 阿弥陀如来 / 不動明王 / 浅草寺 / 模刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
伝教大師最澄の自刻伝承をもつ、比叡山延暦寺根本中堂本尊の薬師如来立像は、現存しないものの、古来その名が広く知られ、模刻の対象となった。他にも、比叡山横川中堂本尊の聖観音菩薩立像や、園城寺の黄不動尊像など、天台宗では信仰を集めた霊像を模刻することが多い。本研究は、史料上に知られる模刻の事例を収集・分析し、あわせて模像作品に対して調査を実施することで、天台宗の模刻を通した新たな視点から、中世仏教形成の一端を探るものである。 2021年度は、勤務先で開催した展覧会、伝教大師1200年大遠忌記念特別展「最澄と天台宗のすべて」(会期:10月12日~11月21日)の出品作品を中心に実地調査を行った。像内に最澄自作の薬師像を納めていたと伝承され、焼失した根本中堂本尊像にもっとも近い姿と考えらえれる京都・法界寺の薬師如来立像(平安時代・11世紀)や、智証大師円仁の自造伝承のある京都・真正極楽寺(真如堂)の阿弥陀如来立像(平安時代・10世紀)などを対象として、X線CT撮影を含めた調査を実施した。また、昨年度に寄託された浅草寺の仏像については、特集展示「浅草寺のみほとけ」(会期:9月28日~12月19日)を実施するとともに、会場で配布するリーフレットを作成した。戦災で多くの堂塔を失った浅草寺に残る屈指の古像である不動明王立像(平安時代・12世紀)をはじめ、出品作品に対して調査を行ったが、今後は寄託中にX線CT撮影を含め、より詳細な分析を行いたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には、昨年度の研究に続けて天台宗における信仰の中核となった比叡山延暦寺根本中堂本尊の薬師如来立像について史料を整理し、現存する遺品との関係について考察を行った(西木政統「天台宗における模刻の意義――比叡山延暦寺根本中堂の薬師如来立像を中心に――」『哲学』148、三田哲学会、10月23日刊行)。また、勤務先で開催した展覧会、伝教大師1200年大遠忌記念特別展「最澄と天台宗のすべて」(会期:10月12日~11月21日)の出品作品を中心に実地調査を行った(展覧会図録『最澄と天台宗のすべて』読売新聞社、10月12日刊行に作品解説を執筆)。また、特集展示「浅草寺のみほとけ」(会期:9月28日~12月19日)の開催にともない出品作品の調査を行い、リーフレットを作成した(西木政統『特集 浅草寺のみほとけ』東京国立博物館、9月28日刊行)。また、過去調査を行った作品のなかで、最澄が四天王寺を訪れた際に造立した可能性が指摘される伝阿弥陀三尊像について、あらためて製作年代と伝来について考察を行い、コラムを執筆した(西木政統「四天王寺の阿弥陀三尊像(重文)について」『聖徳太子と四天王寺』法藏館、11月30日刊行)。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため遠方での調査は中止したものの、勤務先での調査及び史料分析を行い、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
天台宗における仏像の信仰において、宗祖である最澄の自造伝承をもつ比叡山延暦寺根本中堂本尊の薬師如来立像に限らず、聖観音や阿弥陀如来、不動明王といった尊像に対しても、宗内では図像的に特色のある造像が行われた。今後は薬師如来のみならず、様々な尊像に対しても資料を収集し、機会を見つけて実地調査を行いたい。引き続き新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、不要不急の遠方での調査は中止・延期し、勤務先である東京国立博物館の館蔵品や寄託品、展覧会等の借用品に対象を限定して調査を実施したい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大のため、出張を自粛せざるを得ず、これにかかる費用については来年度以降、感染状況に注意して、勤務先の方針に従いながら消化する予定である。
|
Research Products
(8 results)