2022 Fiscal Year Research-status Report
米国の産児調節運動史の再検討:荻野式避妊法の普及と郵便との関係から
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20K12903
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
横山 美和 玉川大学, 学術研究所, 研究員 (70725267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 避妊 / 荻野式避妊法 / ジェンダー / リズム法 / 産児制限 / 産児調節 / 科学史 / 医学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、避妊具および避妊情報の売買や郵送・輸入を禁じた米国の連邦法である「コムストック法」と、産児調節運動ならびに荻野式避妊法の関わりを明らかにし、20世紀前半の米国における産児調節運動史を再検討することにある。荻野式避妊法は1932年にカトリック教徒の医師により米国に紹介されると、「リズム法」として普及し多くの支持者を得た。報告者は、リズム法に関する文書やカレンダーなどの道具は自由に郵送が許可されていたことが異例であり、そのことを産児調節運動家らが驚きをもって受け止めていたことや、それぞれ異なる立場から利用していったことををこれまで明らかにしている。 3年目である令和4年度は、ハーヴァード大学図書館デジタルアーカイブで公開されている、米国の産児調節運動にとって区切りとなる重要な裁判「合衆国対一箱の日本のペッサリー裁判」(1936年判決)に関する資料に着目し、どのような経緯で歴史的な判決は出されたのかということについて調査した。同裁判は日本から輸入された避妊具が税関で没収されたことに対し、産児調節運動家マーガレット・サンガー陣営の医師で、受取人だったハンナ・ストーンが没収の取り消しを求めて裁判で国と争ったものである。ストーンは1審、2審とも国に勝訴し、避妊具を医師宛に輸入・郵送することは違法とはならず、コムストック法全体にわたって解釈を見直すべきという判決を引き出し、このことはサンガー陣営にとって歴史的勝利となった。同裁判の資料は、ストーンの弁護を担当したモリス・アーンストが残した資料であり、ストーン側の主張や根拠とした判例について精査しまとめることができた。また裁判の中でのリズム法についての言及も調査することができ、米国の産児調節運動の中での荻野式避妊法の位置付けについてさらに考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大のために米国に渡航することができなかったが、上記の裁判資料データを入手することができたため、効率よく研究することができた。資料を分析した成果を日本女性学学会で口頭発表したほか、玉川大学人文科学研究センターの紀要に論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、新型コロナウイルス感染状況を注視しながら、可能であれば渡米して米国議会図書館で郵政省内でのリズム法やコムストック法に関する運用の実態や解釈などについて調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究計画を申請した当初は米国のアーカイブに史料調査に行く予定であったが、2020年から新型コロナウィルスの感染拡大が世界規模で起こり、長期にわたって収束しなかったことから渡航が困難であった。現地の数人のリサーチャーにも依頼をしたが、健康問題で途中でリサーチを辞退されたり連絡が取れなくなるなどして、アーカイブでの史料調査はうまくいかなかった(なお支払いは発生していない)。
令和5年度は、7月末~9月前半のうち8日間ほど、米国議会図書館に郵政省関連のアーカイブ史料調査に行く予定である。 仕様予定:旅費60万円(航空券代(東京⇔ワシントンD.C.)+ホテル代)
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