2023 Fiscal Year Research-status Report
米国の産児調節運動史の再検討:荻野式避妊法の普及と郵便との関係から
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20K12903
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
横山 美和 玉川大学, 学術研究所, 研究員 (70725267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 産児調節運動 / 産児制限運動 / オギノ式 / 荻野式避妊法 / 科学史 / 医学史 / 避妊 / マーガレット・サンガー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、避妊具および避妊情報の取引や郵送・輸入を禁じた米国の連邦法である通称「コムストック法」と、産児調節運動ならびに荻野式避妊法の関わりを明らかにし、20世紀前半の米国における産児調節運動史を再検討することにある。 荻野式避妊法は1932年にカトリック教徒の医師により米国に紹介されると、「リズム法」として普及し多くの支持者を得た。報告者は、コムストック法の存在にもかかわらずリズム法に関する文書やカレンダーなどの道具は自由に郵送が許可されていたという事実に着目し、そのことを産児調節運動家らが驚きをもって受け止めていたことや、それぞれ異なる立場からその事実を運動に利用したこと、また、産児調節運動家らの多様な立場についてはさらに深堀りし、中でもマーガレット・サンガーの立場が優勢になった理由について、これまで明らかにしてきた。 4年目である令和5年度は、ワシントンD. C. にある米国議会図書館に赴き、1930年代に郵政長官を務めていた人物の文書の調査を行った。調査により、郵政長官に影響を与えたのではないかと考えられる人物からの書簡を発見した。その人物は聖職者であり、文書が同じワシントンD.C.内にあるアメリカ・カトリック大学にあることがわかったため、急ではあったが調査訪問を依頼したところ、そちらの大学で文書を閲覧・複製することができた。同人物は労働者階級の貧困問題を救うための福祉政策の方面で政権に影響力を持った人物であったが、サンガーらの産児調節運動に批判的であったことで知られ、その解決方法はサンガーと異なるものであった。二人の対立を、先行研究とは異なった視点から見ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
春先には『現代思想』から依頼を受け、19世紀の月経周期研究から20世紀の荻野学説を経て、現代のフェムテックに至るまでの歴史的展開を論文として発表した。博士論文以降の研究のまとめとなるような論文を書くことができた。 また、世界的に新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いたことから、渡米し議会図書館で史料を閲覧することができ、そこで見つけた情報をもとにさらに別の組織が持つアーカイブ史料を閲覧することもできた。それらの資料を分析した結果を玉川大学人文科学研究センターの紀要に論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該の聖職者が時の米国政権に与えた影響に着目し、宗教組織と政府がどのように関わりあって政策を形成しようとしたのか、その中にあって荻野式避妊法がどのような役割を果たしたのかについて、より具体的に明らかにしていきたい。そのことにより、20世紀前半の米国における政治、宗教、科学、ジェンダーの関わりを読み解くことができると考える。
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Causes of Carryover |
2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大により、当初計画していた海外渡航が3年にわたって不可能だったため、繰越額が多く生じてしまった。研究期間を1年延長することが可能となったため、令和6年度は渡米し史料の調査を行うほか、デジタルコレクションがあるものは契約し効率よく史料の収集を行いたい。 また、8月に東京で開催される国際大会での口頭発表が受理されていることから、発表スライドや原稿の英文校閲に予算を使う。他、英語の論文を執筆し、その英文校閲にも予算を使いたい。
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Research Products
(2 results)