2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後児童出版メディアにおける「童話」の編成――戦前・戦中期との関わりから
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20K12998
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
宮田 航平 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 助教 (50802203)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 児童文学 / 日本文学 / 童話 / メディア / 保育雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である2020年度は、「あまんきみこ作品初出一覧①(1965~1974年)」(『あまんきみこ研究会会報』第1号、2018年)で明らかにした児童出版メディアと「童話」の関わりを踏まえて、1960年代後半以降のいわゆる「保育雑誌」に注目し、国立国会図書館東京本館や国際子ども図書館等を利用して資料調査を行った。具体的には、「童話の系譜」(宮川健郎)に連なる作家たちの作品発表の状況について、当初予定していた『母の友』や『こどものとも』(ともに福音館書店)を中心に整理し、すでに目次等を作成していた『びわの実学校』や『大きなタネ』などとともに、個別の作品を検討する準備を進めることができた。 また、児童文学の評論・研究の最新の動向についても検討を行い、2019年に刊行された目黒強『〈児童文学〉の成立と課外読み物の時代』(和泉書院)、今田絵里香『「少年」「少女」の誕生』(ミネルヴァ書房)、村山龍『〈宮澤賢治〉という現象 戦時へ向かう一九三〇年代の文学運動』(花鳥社)などを踏まえて、戦前・戦中期の「童話」に対する見方・考え方を更新することができた。その成果の一部は、『日本児童文学』(日本児童文学者協会)に寄稿した。 さらに副次的な成果として、児童文学研究や日本文学研究の手法を踏まえて、東京都立産業技術高等専門学校における一般選択科目「課題研究」(第4学年)の指導方法を確立することができた。それらの成果は、2件の口頭発表(共著)に結実した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルスの流行により、当初予定していた国際学会への参加や、大阪国際児童文学館での資料調査を行うことができなかった。また『あまんきみこ研究会会報』(あまんきみこ研究会)の編集・発行も延期となり、研究成果の一部を発表することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目となる2021年度は、児童文学と絵本双方の叢書・シリーズを具体的に選定し、資料調査を継続することとする。 また2020年度の研究成果を積極的に発表し、他の参加者や査読者からの意見を踏まえて、今後の研究の方向性を決定していく。具体的には、日本児童文学学会第60回研究大会(大阪府立中央図書館、11月21~22日)での口頭発表や、同学会の『児童文学研究』(3月末)などへの投稿を予定している。書誌的研究の成果についても、『あまんきみこ研究会会報』などで広く紹介する。 上記の研究を遂行するにあたり、2021年度より特別研究者に選ばれた大阪国際児童文学館での資料調査も、社会情勢を見極めながら複数回実施したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、資料調査や学会発表による出張が減ったためである。また次年度は東京五輪が開催される可能性があるため、日本児童文学学会第60回研究大会(大阪府立中央図書館)や大阪国際児童文学館などへの、複数回の出張費用を確保するためでもある。
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