2022 Fiscal Year Research-status Report
戦後児童出版メディアにおける「童話」の編成――戦前・戦中期との関わりから
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20K12998
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
宮田 航平 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (50802203)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 児童文学 / 日本文学 / 童話 / 出版文化 / 雑誌 / 叢書 / 国語教育 / 幼児教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目となる2022年度は、前年度の調査研究の成果を論文にまとめるとともに、引き続き児童文学や絵本の叢書・シリーズや雑誌を対象に調査研究を行った。 前者については、「「ある日ある時」に「中国の大連」が語るもの ――『あるひあるとき』(あまんきみこ文・ささめやゆき絵)論――」(『国語教育史研究』2023年3月)、「『あるひあるとき』論の余白に――絵本・「ひとしずく」・資料調査」(『あまんきみこ研究会会報』2023年3月)の計2本の論文に結実した。後者については、大阪府立中央図書館国際児童文学館での資料調査を計3回行うことができた(12月~3月)。特に戦後直後から1970年代頃までに、坪田譲治や与田凖一が関わった叢書や雑誌を網羅的に調査することで、出版メディアから見た戦後の児童文学の流れを捉えることができ、論文投稿の準備を進めている。また新潟県上越市でのイベント「未明生誕140周年記念シンポジウム」(12月17日)などにも参加しながら、戦前・戦中期の関わりについても検討を始めている。 これらの資料調査に先立って、日本児童文学学会第61回研究大会でのシンポジウム「現代児童文学をいかに歴史化するか――資料の保存・活用の方策を考える――」に登壇し、発表や議論を通して調査研究の進め方について示唆を得ることができた。その成果は「あまんきみこにとって「資料」とは何か――「現代児童文学」を語らうために――」(『児童文学研究』2023年3月)として論文にまとめることもできた。 その他の成果としては、『日本の文学者18人の肖像【現代作家編】』(あすなろ書房、2022年)において、「あまんきみこ」や「江國香織」などの項目を執筆した。また戦後の児童文学叢書・シリーズや検定教科書における文学作品の扱われ方などを踏まえて、高等学校国語教科書『新文学国語』(三省堂)とその指導書の執筆も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の流行も比較的落ち着き、大阪府立中央図書館国際児童文学館での調査研究については、概ね計画通りに行うことができた。また昨年度までの資料調査が遅れていた影響で、論文化にもやや遅れが見られたが、今年度は『児童文学研究』や『国語教育史研究』、『あまんきみこ研究会会報』に計3本の論文を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究4年目となる2023年度は、2022年度までの調査による研究成果を論文にまとめることに力を入れたい。引き続きあまんきみこ研究を軸として、坪田譲治や与田凖一、古田足日などにも適宜言及しながら、「戦後児童出版メディアにおける「童話」の編成」のトピックを提示したい。日本児童文学学会の研究紀要『児童文学研究』(3月末)を中心に、『大阪国際児童文学振興財団研究紀要』(10月末)や『国語教育史研究』(10月末)などにも論文投稿することを目指しながら、最終報告書をまとめることとしたい。
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Causes of Carryover |
引き続き大阪府立中央図書館国際児童文学館の特別研究者に選ばれたため、複写代や物品費を抑えることができた。次年度は他の施設や研究機関での調査も予定しているため、その際の複写代等に充てることとしたい。
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