2021 Fiscal Year Research-status Report
動詞から受身標識への文法化における規則性:多言語調査とコーパス調査を通して
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20K13013
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
夏 海燕 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (80727933)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遭遇動詞 / 受身 / 自己領域へのモノの移動 / 意味変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、主に中国語の「遭遇動詞」について以下の研究を実施した。 中国語において、遭遇動詞と言われてきている動詞カテゴリーが受身標識へ文法化する傾向があると指摘されている。しかし、これまでの先行研究では、遭遇動詞の定義や範囲がはっきりされておらず、また遭遇動詞と動詞の遭遇義を区別せずに分析されることも問題点として挙げられる。本研究では、遭遇動詞の意味分析を行い、遭遇義はこれらの動詞の基本義ではなく、拡張義であること、そして、遭遇動詞の基本義の多くは<自己領域へのモノの移動>という意味が含まれることを明らかにした。 <自己領域へのモノの移動>は着点動作主動詞や日本語の「てくる」にも共通して見られる意味となる。これまでそれぞれ個別に取り上げられた言語現象に、<自己領域へのモノの移動>から<不快な経験をする>、または<受身>へといった意味変化の共通性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共時的多言語調査が新型コロナウィルスの影響が長期化することを受け、実現できない状況にあるが、①中国語受身標識の通時的データの収集・分析、②日本語の「てくる」構文における<不快感>の原因究明、③中国語の遭遇動詞の意味分析、などの研究を前倒しで実施し、これらの言語現象に<自己領域へのモノの移動>から<不快な経験をする>、または<受身>へいった共通の意味拡張・意味変化の方向性があることを明確にすることができた。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの影響が収まりつつあるなかで、2022年度においては主に共時的多言語調査が実現できるように努力する。また、これまで集めていたデータや考察をまとめ上げ、学会発表や学雑誌投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の長期化を受け、予定していた多言語調査や海外での学会発表が影響され、旅費等で未使用額が出た。次年度の調査旅費に使う予定である。
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