2022 Fiscal Year Research-status Report
動詞から受身標識への文法化における規則性:多言語調査とコーパス調査を通して
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20K13013
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
夏 海燕 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (80727933)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 「てくる」 / 不快感 / 着点動作主動詞 / 自己領域 / 人称階層 / 受身 |
Outline of Annual Research Achievements |
受身との関連性を踏まえたうえで、「逆行態標識(inverse marker)」(Nariyama 2000、Shibatani 2003、2006、住田2006、2011、古賀 2008、清水2010、夏2013など)または「行為の方向づけ」(澤田 2009)と言われている「てくる」の機能を取り上げて考察を行った。 「てくる」の本動詞「来る」と対をなす「来す」は着点動作主動詞のカテゴリーに属し、〈来るようにする〉という意味を基本義に持っていたが、「支障を来す」「破綻を来す」などのように、〈結果として[望ましくない事態を]引き起こす〉という意味への拡張が見られる。また、着点動作主動詞における自己領域と類似した概念に、ウチとソト(牧野 1996)があり、これは日本語の逆行態の「てくる」が使用可能な人称階層「1人称>ウチ人称>ソト人称」とも照応する。「てくる」の使用に伴う〈不快感〉の意味は着点動作主動詞に類似し、「話者の非意図性」及び「話者領域の侵害」という統一的な視点によって、説明可能であると論じた。これまで個別に取り上げられた言語現象に意味変化の共通性を生み出す動機付けを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共時的多言語調査が新型コロナウィルスの影響が長期化することによって、実現しにく状況であった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの終息に伴い、各国の入国制限も緩和されると見込まれ、2023年度では共時的多言語調査を中心に研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の長期化を受け、予定していた多言語調査や海外での学会発表が影響され、旅費等で未使用額が出た。次年度の調査旅費に使う予定である。
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