2023 Fiscal Year Research-status Report
The Social Work of the Buddhist Community in the Russian Empire
Project/Area Number |
20K13201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 岳彦 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特任助教 (60723202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロシア帝国 / チベット仏教 / 宗教政策 / 民族政策 / 社会事業 / 生態環境 / 牧畜経済 / ボランタリー |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア連邦によるウクライナ侵攻のため、ロシア連邦および同カルムィク共和国での史資料調査を行うことができず、本研究課題採択以来、研究目的に沿った研究の遂行が極めて難しくなっている。令和5年度は、研究計画の見直しにもとづき、分析資料の収集を前年度に引き続きカザフスタン共和国アルマトゥ市で9月と2月の2回行なった。これらの調査では、残念ながら、子供、老人、女性に対する社会事業について十分な成果を見出すことはできなかったが、ロシア帝国の生態環境に対する取り組み、特に農業における害獣(ハタリス)・害虫(バッタ)の駆除事業と、その事業に強制的に関与させられた牧畜民の関係について分析することができた。政府の要請を受けてカルムィク仏教教団が農業推進の主体となっていたことは、ウクライナ侵攻前のロシアでの史料調査で明らかになっている。害獣害虫の駆除義務はカルムィク社会にも課せられており、政府が押し付ける価値と「不殺生」を説く仏教教団の価値に齟齬が生じた可能性があり、仏教教団の社会事業への関与、仏教教団の人々の生活と経済への関与のありかたについて、新たな視角を得ることができた。 また、ロシア帝国における極めて近い存在としてのブリャート社会(チベット仏教徒、モンゴル系民族、牧畜民)との比較という観点で、ブリャート僧侶の動向を調査し、その動向がカルムィク社会に与えた影響について検証を行なった。 以上の分析成果にもとづき、カルムィク仏教教団と害獣害虫の関係性についてオーストリア科学アカデミー(9月)、ロシア東欧学会(11月)、国立民族学博物館(3月)で、ブリャート僧侶の動向についてロシア史研究会(10月)で、それぞれ口頭発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度も、ロシアによるウクライナ侵攻によって、引き続きロシア地方都市の公文書館史料を収集することができなかった。研究計画の見直しにもとづきカザフスタンでの調査によって代替したが、本研究課題の達成に直接的に必要な史資料を得ることができず、研究の遅れにつながっている。 令和6年度も、ロシア以外での調査によって、本研究課題により適切な調査方法を模索する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ロシアによるウクライナ侵攻による研究の遅れを補うため、当初の研究計画よりも研究期間を延長した。 令和6年度は、前年度までのカザフスタンでの調査で得られた新たな知見を研究成果として国内外に発信する。牧畜民社会の害獣害虫駆除事業とその影響、ブリャート僧侶の動向とそのカルムィク社会への影響について、研究成果をまとめるための追加調査と、その研究推進の有効性について国内外の研究者との意見交換を行う予定である。
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Causes of Carryover |
3年間続いた新型コロナウィルスのパンデミックによって、本研究の推進にとって重要な国外での研究調査を行うことができず、数年にわたって大幅に予算が余ることになった。また、令和5年度は、ロシアによるウクライナ侵攻によって、引き続きロシアでの調査ができず、カザフスタンでの調査でそれを補ったが、全予算の支出とならなかった。 そのため、研究期間を当初の計画より延長し、本研究を継続する予定である。 令和6年度の使用計画としては、前年度までの調査で得られた新たな知見を研究成果としてまとめるための追加調査の旅費として使用する。また国内外の研究者との意見交換を進め、本研究の成果を発信するため、国内外の学会に参加する。
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