2020 Fiscal Year Research-status Report
Liberalism and the Rule of Law in 19th Century Colonial India
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20K13217
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
稲垣 春樹 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00796485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イギリス帝国 / 自由主義 / 法の支配 / インド / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀イギリス帝国における自由主義思想の中核的理念であった「法の支配」の観念について、ヘンリー・S・メイン(1822-88)とジェイムズ・F・スティーヴン(1829-94)というイギリス領インド植民地の2人の法律家を事例として検討するものである。 2020年度はメインについてロンドンの英国図書館(British Library)において史料調査を行う予定であったが、コロナ禍により不可能となった。そこで、刊行された一次史料(データベースから入手可能なものを含む)および関連する研究文献の収集と分析を主として行った。その結果、口頭報告2本、日本語論文2本(うち1本はシンポジウムの記録)、英語図書1冊に、今年度の調査を反映させることができた。 日本語論文では、1830年代から1880年代にかけてのイギリス領インド植民地における法の支配の具体的なあり方を、植民地政府と裁判所の対立、およびインド人の司法実践に着目して検討した。2021年10月に刊行予定である英語図書は主として1820年代のイギリス領インドを取り扱うものであるが、本研究によって得られた知見を結論部分に組み入れることによって、18世紀末から19世紀後半にかけてのイギリス領インド植民地の歴史について法の支配という観点から再検討する見通しを提示することができた。 これらの成果は、法という観点からイギリス帝国史およびインド植民地史に新たな知見を付け加えるものである。また、口頭報告および日本語論文のそれぞれ1つは、歴史学の学協会としては規模の大きい歴史学研究会のシンポジウムにおけるコメントおよびその記録であり、イギリス史・イギリス帝国史以外の研究者にも本研究の成果を広く伝えることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はロンドンの英国図書館において海外調査を予定していたが、コロナ禍により不可能となった。そのため刊行一次史料および研究文献の調査と予備的な考察(関連する著書、論文の執筆)を主たる作業とせざるをえなかった。ただし、史料・文献の収集・分析をはじめとして、海外調査以外の作業は順調に進んでいるため、進捗状況としては(3)やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画がこのまま実施できるかどうかは今後のコロナ禍の状況によるが、海外調査が可能となった場合には、イギリスの図書館・文書館において、交付申請書に記した内容の調査を行う。当面は刊行一次史料および二次文献を用いた作業となるが、これについては、メインの刊行史料、メインの手稿史料、スティーヴンの刊行史料、スティーヴンの手稿史料という検討の順番を入れ替えて、日本でも入手可能なメインの刊行史料およびスティーヴンの刊行史料の検討を先に行うこととする。これによって、海外調査が可能となるまでの期間における研究の遅滞を最低限にとどめたいと思っている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により2020年度に予定していた海外調査が延期となったため。渡航が可能となった場合には、2021年度以降に海外調査のための旅費として執行する予定である。
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