2021 Fiscal Year Research-status Report
Liberalism and the Rule of Law in 19th Century Colonial India
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20K13217
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
稲垣 春樹 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00796485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イギリス帝国 / 自由主義 / 法の支配 / インド / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀イギリス帝国における自由主義思想の中核的理念であった「法の支配」の観念について、ヘンリー・S・メイン(1822-88)とジェイムズ・F・スティーヴン(1829-94)というイギリス領インド植民地の2人の法律家を事例として検討するものである。2021年度は、国外調査が可能となった場合にはイギリスの図書館・文書館において調査を行う予定であったが、これはコロナ・ウイルスの感染状況により実現できなかった。そのため、刊行一次史料および二次文献の収集と分析を主として行った。 メインについては、インド総督府の行政文書の一部である『覚書』を中心に検討した。その結果、メインがインドにおいて問題視されていた山賊行為について、通常法ではなく超法規的な対応が必要であると主張していたこと、そして征服直後の地域については通常よりも簡素な手続きによる立法を可能とすべきであると主張していたことが分かった。これらはメインがインド植民地においてはイギリス本国とは異なる法の基準が適用されるべきだと考えていたことを示している。一方で、メインがイギリス本国において第二次選挙法改正などによる民衆の政治参加の拡大に警戒感を示していたこともわかった。これはメインが本国対植民地という単純な二分法を採用していなかったことを示唆しており、帝国における自由主義を考えるうえで重要である。 スティーヴンについても、『覚書』などの分析から、メインと同様にインドにおける立法=行政権の優位を主張していたこと、そして本国における民衆政治の進展を警戒していたことが確認できた。さらにスティーヴンについては、在インドのイギリス人の裁判権に関するイルバート法案をめぐる論争において、ミリセント・フォーセットら女性運動家から厳しく批判されていたことも分かった。これは本研究にジェンダーの視点を導入するきっかけになるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も英国における調査ができず、その部分に関する研究が進展しなかった。しかしそれ以外の日本で入手可能な史料・文献を用いた調査の割合を増やし、それについては順調に進んでいるため、総合的に(3)やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
国外調査が可能になれば、英国における調査を実施する。しかしそれが依然として難しければ、現在入手している史料・文献を用いて研究成果をまとめる方針に切り替えることを検討している。その場合には、(1)2人のインド植民地における司法行政への関与、(2)イギリス本国における法律家・文筆家としての活動という研究の2つの軸のうち、(2)についての検討を充実させる方向で対応する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染状況により国外調査ができなくなったため。国外調査が可能となった場合には、その旅費に当てる。
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