2022 Fiscal Year Research-status Report
Liberalism and the Rule of Law in 19th Century Colonial India
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20K13217
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
稲垣 春樹 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00796485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イギリス帝国 / 自由主義 / 法の支配 / インド / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀イギリス帝国における自由主義思想の中核的理念であった「法の支配」の観念について、ヘンリー・S・メイン(1822-88)とジェイムズ・F・スティーヴン(1829-94)というイギリス領インド植民地の二人の法律家を事例として検討するものである。2022年度にはイギリスの図書館・文書館での調査を行う予定であったが、これはコロナ感染状況により実施できなかった。そのため昨年度と同様に、刊行一次史料および二次文献の収集・分析に多くの時間を用いた。昨年までは『覚書』などの行政文書を中心に分析してきたが、今年度は両者の著作と、それに関連する二次文献にも検討の対象を広げた。 メインについては、『古代法』『東西の村落共同体』『民衆政治』などを検討した。彼は、一方でインド植民地統治全般において行政の裁量権を過度に強化すべきではないとの立場を取ったが、辺境地域における治安維持については、超法規的な対応を立法により合法化すべきだという立場を取っていた。 スティーヴンについても、『自由・平等・博愛』『ナンコマーの物語』『イングランド刑法の歴史』などの著作や雑誌記事などを検討した。彼は一方で、行政・司法対立が直接の話題である『ナンコマーの物語』においては、司法の側に立った。しかしインドからの帰国直後から推進したイングランド刑法の法典化運動では、法廷における裁判官の裁量権を縮小する姿勢を取っていた。 昨年までの検討とあわせて、現在までに、メインとスティーヴンの両者がインドにおいて法の支配に対してとった態度には、行政の裁量権を拡大しようとする傾向と、それを司法により抑制しようとする傾向の両方が現れていたことがわかってきた。これは現地のイギリス人裁判官とも行政官とも異なる立場である。この点は先行研究では強調されてこなかったことであり、論文化の作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も英国における調査が出来ず、その部分に関する調査が進展しなかった。日本で入手可能な史料・文献については、新たに重要な論文や著作の検討を進めることが出来た。そのため、総合的に(3)やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は英国における調査が可能となる見込みであるので、未着手となっていた文書館史料を用いた調査を進める。また、次年度が最終年度となるので、これまでの成果をまとめる論文をメインとスティーヴンについて1本ずつ執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
研究者のその他の業務の多忙、イギリス国内史の動向把握に当初予想以上の時間がかかったこと、当初予定していた国外調査が実施できなかったことなどにより、次年度使用額が生じた。次年度に国外調査を実施することで使用する予定である。
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