2023 Fiscal Year Annual Research Report
Liberalism and the Rule of Law in 19th Century Colonial India
Project/Area Number |
20K13217
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
稲垣 春樹 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00796485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イギリス帝国 / 自由主義 / 法の支配 / インド / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀イギリス帝国における自由主義思想の中核的理念であった「法の支配」の概念について、ヘンリー・S・メイン(1822-88)とジェイムズ・F・スティーヴン(1829-94)というイギリス領インド植民地において活動した2人の法律家を事例として検討するものである。 2023年度には、本研究課題における初の海外調査として、夏季に3週間、英国ロンドンとケンブリッジの文書館において調査を行うことができた。英国図書館では、ヘンリー・メイン文書(C179)およびその他の関連文書(チャールズ・ウッド文書F78など)を閲覧し、複写した。LSE図書館でも、メインの文書を閲覧・複写した。ケンブリッジ大学図書館では、スティーヴンに関する文書(Add 7349など)を閲覧・複写した。これらの文書は、メインおよびスティーヴンが英領インドの統治の現場においてどんな課題に取り組んでいたのかを示す史料群であり、法思想のみならず法実践に着目して、19世紀後半の英領インドおよびイギリスにおける「法の支配」の観念の内容を具体的に明らかにするための重要な史料となると考えている。 昨年までの検討と合わせて、現在までに、メインとスティーヴンの両者がインドにおいて法の支配に対してとった態度は、植民地行政府の裁量権を拡大しようとする傾向と、それを司法により抑制しようとする傾向の両方が見て取れることがわかっていた。今回の史料調査において収集した一次史料群は、それをより具体的に示す根拠となりうる。史料の大半は手書きのもので、難読のものも多いため、分析には時間を要するが、このような史料群を入手できたことは今年度の大きな成果であった。これまで刊行史料および二次文献に依拠して進めてきた研究と合わせて、本格的な実証研究として発表することを目指して、論文化の作業を継続している。
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