2022 Fiscal Year Research-status Report
匈奴-サルマート期の編年確立を目的とするエニセイ川上流域の中国系文物の調査
Project/Area Number |
20K13230
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大谷 育恵 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80747139)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 放射性炭素年代測定 / エニセイ川流域 / タシュティク文化 / マルケロフ・ミス遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年年末には、コロナ後の調査研究の再開を目指して、ロシア側と連絡を取っていた。該当地域のコロナ禍期間中のニュースとしては、エニセイ川流域のタシュティク文化の遺跡として有名なオグラフティ遺跡の新たな発掘をエルミタージュ美術館が実施し、その報告が刊行されたことがあった。放射性炭素年代測定も新たな発掘に基づいて実施されていたので、(1)エニセイ川流域とその上流部にあたるサヤン地域、(2)それに隣接するアルタイ地域の匈奴-サルマート期の遺跡とその放射性炭素年代測定結果を集成して検討した。 オグラフティ遺跡などタシュティク文化の遺跡から出土した中国系文物の現地調査を2023年春から実施予定であったが、これについては侵攻の継続により実施しなかった。しかしながら、上述の検討と資料集成の結果、マルケロフ・ミスⅡ遺跡出土資料に対して実施する予定で進めていた放射性炭素年代測定については、侵攻開始前に試料が発送されていたため受領し、測定を実施した。 比較的近年、ノヴォシビルスク国立大学とハカス国立大学はタシュティク文化の遺跡を発掘調査し、『ハカス-ミヌシンスク地区のタシュティク遺跡』(2007年)という報告書を刊行していたので、調査者らと連絡をとり、マルケロフ・ミスⅡ遺跡を測定候補に絞り込んだ。この遺跡は規模においても10mを越える大墓から小型墓、埋葬遺構においてもいわゆるタシュティク文化を代表する石築古墳から段列状の石築埋葬施設の墓など多様な要素が混在する墓地であったため、測定例がなかったタイプの埋葬遺構に対して測定を実施し、各種構造の埋葬遺構が同一年代のものかどうかを検証した。放射性炭素年代測定を実施例を増やし、その結果を中国系文物の再整理から導き出される年代と比較するのが本研究の目的であるが、後者の現地調査ができないため前者の段階で止まってしまった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻とその長期化のため。コロナ禍後を見据えて2022年度春から現地調査を計画していたが、侵攻により現地渡航、共同研究ともに先行きが見通せなくなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
採択初年度よりコロナウイルス感染症の世界的蔓延と重なったため、1年間の延長は予定していた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻も研究実施のための困難として加わった。 共同研究ならびに現地調査を実施するのは、南シベリアを対象としているとはいえふさわしくない。したがって、中国系文物の整理を通してユーラシア草原地帯の広域編年の整備を図るという目的は維持したまま、調査地対象地を南シベリアの周縁にあたるモンゴル国、カザフスタンなどに振り替えて調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
ロシアへ渡航して実施する現地調査ができなかったため。
|
Research Products
(2 results)