2023 Fiscal Year Research-status Report
匈奴-サルマート期の編年確立を目的とするエニセイ川上流域の中国系文物の調査
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20K13230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大谷 育恵 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80747139)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ノヨン・オール墓地 / 漆器 / 有銘漆器 / 有銘鉄刀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度中もロシアのウクライナ侵攻は続いており、シベリア地域での調査は不可能であった。したがって、研究対象とできる範囲も実地調査もモンゴル国に限られることになったが、ウクライナ侵攻以前に調査を実施していたロシア関連の資料については機会をとらえて報告を出していった。 まず本年度の成果としては、2006~2015年にモンゴル・ロシア共同発掘調査団が発掘調査した匈奴貴族墓・ノヨン・オール墓地から出土した漆器について、銘文釈読結果を公表した。本研究は年代の定点を指し示すことになる中国系文物の整理を主目的としているが、新たに1点について製作年代を導き出すことができた。これは同墓地の年代決定において重要であり、その成果は10月に開催されたS. S. ミニャーエフ教授追悼研究会において報告した。 ロシア関連資料2点目としては、ブリヤート共和国内のチェリョムホヴァヤ・パジ匈奴墓地で出土した鉄刀について、銘文の釈読と中国出土資料との比較を行った。報告は本年度中に出し、東アジアの全有銘鉄剣・鉄刀資料については次年度報告予定である。 そして漆器関連では、モンゴル・韓国共同発掘調査で出土した漆器資料を再調査し、耳杯1点については銘文を発見したことから報告を執筆し、また別の1点については文様を書き起こして東アジアの類例資料と共に報告した。 このほかに、現在日本においては匈奴関連の遺跡や近年の考古出土資料を伝える書籍がないため、雄山閣より『遊牧国家 匈奴の歴史と文化遺産』を2024年春に刊行するため準備を進めた。刊行にあたっては、遺跡一覧表など研究状況を整理して新たに付け加えた情報もあるが、匈奴建国2200年を記念して編集・出版された図録が元になっており、オールカラーで一般へ近年の考古学成果を伝える普及書となることも期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ロシアによるウクライナ侵攻が続いたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度よりコロナウイルス感染症の蔓延、その後はロシアによるウクライナ侵攻と続いたことからシベリア地域内での調査の見通しが立たなくなったが、本年度は最終年である。予定していたシベリア地域内ではないが、モンゴル国で発掘調査を実施し、本研究を終える予定である。
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Causes of Carryover |
発掘調査が延長となったため
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