2021 Fiscal Year Research-status Report
古人骨の高精度同位体分析に基づく先史時代における琉球列島の人の移動の解明
Project/Area Number |
20K13234
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高椋 浩史 九州大学, アジア埋蔵文化財研究センター, 学術研究者 (10759418)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 古人骨 / 考古学 / Sr同位体比分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、鹿児島県の種子島に所在する弥生時代終末期から古墳時代にかけての墓地遺跡から出土した人骨資料を用いて、人の移動を解明することを目的とする。具体的な分析手法として、人骨の歯牙のSr同位体比分析をおこない、幼少期に出土遺跡周辺とは異なる地質環境で成長した個体を抽出し、その個体についての形質人類学や考古学の情報を統合し、当該地域の人の移動の様相を把握する。これらを通じて、古代国家形成前における南島の歴史像をより具体的に復元することを目指す。 申請者はこれまで広田遺跡出土人骨のSr同位体比分析を進めてきた。その結果、広田遺跡の下層出土人骨において、下層新段階になると古段階の集団とは異なる地質環境で幼少期を過ごした集団が現れることがわかった。この結果の解釈には、これまで進めてきたSr同位体比分析の追加分析(動物の分析、他の歯種の分析、種ケ島内の他の遺跡の分析)が必要となった。さらに、Sr同位体比の分析結果の解釈するためには、形質人類学(骨形態の情報)と考古学(副葬品や埋葬施設等)の情報も加えた総合的な解釈もおこなう。 本年度は、広田遺跡から出土した人骨のうち、これまでSr同位体比分析をおこなっていなかった個体の分析と、再度分析を実施する必要があった個体の再分析を実施した。あわせて、分析により明らかとなった移入者の考古学的情報の整理もおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、これまで実施することができなかった分析や調査を、本年度はおおむね実施することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
広田遺跡の下層から出土した人骨について、分析可能な個体のSr同位体比分析を完了したので、その成果を学術誌に投稿すべく、準備を進めていく。あわせて、申請者が所属している博物館でその研究成果を広く発信するための準備も進める。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた調査に使用する旅費や分析に必要な消耗品(分析機器に使用するガス等)の購入が不要だったため。次年度に実施する調査の旅費や追加分析が必要となる場合の消耗品の購入や旅費に使用する。
|