2020 Fiscal Year Research-status Report

西周王朝の封建と疆域：甲骨と青銅器による祭祀と政治支配

Research Project

Project/Area Number	20K13236
Research Institution	Komazawa University
Principal Investigator	角道亮介駒澤大学, 文学部, 准教授 (00735227)
Project Period (FY)	2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords	中国考古学 / 西周 / 青銅器 / 甲骨 / 封建 / 涇河（涇水）
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、西周前期から中期における西周王畿西方の諸侯国への王朝からの政治的働きかけと、それへの諸侯国側の反応を、青銅器祭祀と甲骨祭祀・動物犠牲の広がりという面から解明することを目的とする。西周王朝の政治的広がりについて、西周王畿および王朝と関係の強い山西省・河南省などの東方諸地域においては多くの先行研究が存在する一方で、甘粛省・寧夏回族自治区といった西方疆域への研究はほとんどなされてこなかった。これまでの調査では甘粛省霊台県白草坡墓地を除き、西周王朝とのつながりを示す遺跡が王畿西方から発見されなかったためである。関中盆地を王畿とする西周王朝の西隣には、研究上の空白が存在していた。そのような状況下で、2018年に実態が明らかとなった寧夏回族自治区彭陽県に位置する姚河ゲン遺跡は、西周王朝と西方諸集団との政治的関係を解明するための大きな契機となっている。当遺跡からは西周王朝系の青銅器や青銅器の鋳型とともに、文字を有する甲骨が出土した。西周期における有字卜骨は王畿から極めて限定的に出土するのみであり、これは例外的な出土事例である。西周王朝は祖先祭祀に用いる青銅器を服属集団に配布することで、政治的な正当性を維持したと考えられており、それらの青銅器は実際に王畿東方の諸地域から多く出土している。一方で、姚河ゲン遺跡に代表される王畿西方地域ではこのような青銅器の配布は一般的でなく、卜骨に代表されるような別の政治的役割を有する遺物が利用されていた可能性が高い。西周時代の王畿西方の諸遺跡の資料を収集し整理することで、西周王朝との支配－被支配の関係を規定する物質資料の存在が明らかとなる。継続して資料収集に努め、西周王朝の西方への政治的広がりを検討する。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 本研究の遂行のためには、現地の研究者と協力しながら最新の出土資料の検分や遺跡踏査を行うことが不可欠であった。しかし、2020年2月より新型コロナウイルスの影響で中国に入国することが困難であり、最新の出土資料を実地に調査することが今なおできていない。当初の計画を軌道修正し、たとえ現地で資料調査をすることができなくとも成果を出せるよう今後の研究方針を調整中である。
Strategy for Future Research Activity	新型コロナウイルスの影響が収束せず、今後も中国での資料調査が実施できない可能性を考え、日本での資料収集を中心とするように研究の方針を軌道修正する。すなわち、対象となる陝西省西部・甘粛省・寧夏回族自治区の既報告資料の網羅的な収集を改めて実施し、遺跡の分布・関連資料の集成と祭祀遺構の性格への分析を丹念に行う予定である。本研究課題にとって重要な資料である卜骨だけでなく、動物犠牲を伴う祭祀行為がどのような空間的・時間的広がりを見せるのかについても再検討を行う。
Causes of Carryover	新型コロナウイルスによる影響により、中国での調査が実施できなかった。そのため、もともと翌年度以降に購入を予定していた物品（カメラ機材など）を繰り上げて購入することで予算の均等化を図ったが、それでも旅費の分の未使用額が当初計画を上回り、結果的に翌年度に繰り越されることとなった。国外への渡航制限が解除されれば、現地調査を複数回行い、2020年度に行えなかった調査も含めて使用する予定である。一方、2021年度の後半に入っても渡航制限が解除されない場合、研究計画を切り替え、国内における資料調査を実施することで旅費からの支出に充てたい。