2021 Fiscal Year Research-status Report
「奴隷的拘束からの自由」の現代的意義を巡る比較法的研究
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20K13302
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小池 洋平 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (50779121)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 奴隷的拘束からの自由 / アメリカ合衆国憲法修正第13条 / 日本国憲法第18条 / 奴隷制 / 奴隷制廃止 / 意に反する苦役 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,奴隷制廃止後のアメリカ社会において,アメリカ合衆国憲法修正第13条(以下「修正第13条」と記す。)がいかなる規範として立法及び訴訟に反映されたのかを明らかにすることである。この目的を達成するために,本研究課題では,【課題①】修正第13条を執行する立法の調査,【課題②】修正第13条が直接的・間接的に問題となった憲法訴訟の分析という2つの具体的な課題を設定している。 2021年度は,【課題①】に関連して修正第13条が立法(連邦法)に与えた影響の分析を行った。具体的には「1866年 公民権法」に関する連邦議会審議を主たる素材とし,同法が保障しようとした権利と修正第13条審議とを重ね合わせることで,特に所有権保障を中心とした権利主体者観の異同を検討できることを確認した。 また,本年度は【課題②】の憲法訴訟についても資料調査及び分析に着手した。具体的には1873年のSlaughterhouse Cases合衆国最高裁判決の分析に取りかかっている。当該最高裁判決は,一般的にはアメリカ合衆国憲法修正第14条の適用範囲を巡る研究で言及されることが多いが,修正第13条について初めて最高裁が解釈を示したものでもある。法廷意見を執筆したMiller判事をはじめとして,各判事の法思想などを踏まえつつ検討することで,日本国憲法第18条の解釈(奴隷的拘束と意に反する苦役の差異など)に資する部分が多いことを確認した。 2022年度は,上記の【課題①】に関する本研究の到達点を示し,【課題②】については分析をさらに進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題における具体的な課題(【課題①】と【課題②】)につき,COVID-19感染拡大による移動制限のため,アメリカ連邦議会図書館が来館者に提供しているデータベースが利用できず,資料調査と収集の両方で時間がかかってしまっている。 そのため,分析を進めていくうちに必要となった資料の入手に想定以上の時間を要し,本研究課題の全体的な進捗状況にもやや遅れが生じてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は【課題②】の訴訟への影響を中心に分析を行う。上述のように2021年度中にSlaughterhouse Cases最高裁判決にある程度着手できたため,2022年度末にはその成果を公刊する予定である。 また,資料入手に時間を要することを踏まえて,本来は2023年度に着手する予定であったLochner v. New York合衆国最高裁判決の分析にも取りかかる。 なお,COVID-19のため,アメリカ連邦議会図書館が利用できる見込みが立たない。そのため,2022年度は国内からもアクセスできるデータベースを活用する予定である。
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Causes of Carryover |
CODIV-19感染症の拡大により,2020年度及び2021年度はアメリカでの資料調査(出張)が実施できなかった。そのため,その旅費に係る次年度使用額が生じた。 2022年度以降も海外での資料調査は難しい状況であることが予想される。そのため,(1)国内の研究機関が所蔵する資料の利用及び取寄せ,(2)他の研究機関(具体的には研究代表者が利用資格を持つ早稲田大学図書館)が契約しているデータベースの活用及びそれに係る旅費,(3)他の研究機関が契約していないデータベースの利用料などが新たに必要になる可能性が高い。 次年度使用額については,これら新たに必要となった経費に充当する計画である。
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