2020 Fiscal Year Research-status Report
家庭裁判所が主導する多機関連携の理論の構築及び運用の促進
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20K13345
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大貝 葵 金沢大学, 法学系, 准教授 (90707978)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多機関連携 / 少年のニーズ / ソーシャルサービス |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス少年司法が進めている多機関連携のための1つの方法として、「司法官に行われる研修」について明らかにした。当該研修は、2011年の欧州評議会の勧告を受け、子どもと家族に適合的なソーシャルサービスの発展をフランスにおいても実現するための1つの方法として導入されている。このソーシャルサービスの発展こそ、多機関連携によることで実現されることが確認されている。但し、多機関が連携するためには、各機関が用いる言語や知識を共有することが必要となる。そのために、司法官が、多機関との連携に要する共通の知識や言語を獲得し、「少年」との対話を可能とするための専門的技術や知識を要するための新たな研修を2019年度に制度化した。 さらに、フランスにおける多機関連携の要となる少年司法保護局による取り組みとその理念についても明らかにした。少年司法保護局は、変化する少年のニーズに適合する個別化された処遇を少年に適応するという理念とともに、少年の成育歴の一貫性及び継続性を保障していくために少年司法保護局が積極的に多機関との連携に乗り出す必要性を明確にした。そのために、県会の有する児童福祉機関であるASE及び少年司法保護局が管轄する民間団体であるアソシアシオンとの連携を進めている。具体的には県会が連携を進めるために創設した部局に少年司法保護局の体表者も参加したり、アソシアシオンとの覚書を締結し、連携のためのプロトコルを作成しようとしている。 但し、フランスでは新たな少年刑事司法法典が制定され、当該法典が上記流れにいかなる影響を与えるのかを注視する必要があるため、少年刑事司法法典の翻訳も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、少年司法及び少年司法保護局による連携政策を文献の限りにおいては調査し明らかとすることが出来ているが、実際に、いかなるフローで多機関との連携が進んでいくのか、その具体的な場面が確定できていない。この場面が確定できなければ、多機関連携の課題及びその解決策が明らかとならず、日本への示唆も行うことができない。 しかし、文献による調査の裏付けとともに、上記フローを獲得するためのフランスでの現地調査が、現在行えない状況にある。そのため、研究自体がやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、フランス少年司法における多機関連携の情報及び課題は、文献調査の限りでは尽くされている状況である。そのため、現地調査の実現を可能な限り追及していく。 但し、現地調査が叶わない場合には、少年司法保護局への質問票の送付、少年係判事への質問の送付、アソシアシオンへの質問票の送付などを行うことで、現地調査に代えていく。しかし、質問票の送付は、返答がある可能性が不明である。
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Causes of Carryover |
令和2年度夏又は冬にフランスでの現地聞取り調査を行うために30万円の確保をしていたが、渡仏できなかったため。 令和3年度、渡仏し現地聞取り調査を夏と冬の2回行うことで、計画を執行する予定である。 具体的には、少年司法保護局民間部局及びアソシアシオンへの聞取り調査を8月乃至9月に行い、少年司法保護局、司法官養成学校、国立少年司法保護局学院への聞取り調査を2月乃至3月に行う予定である。
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