2021 Fiscal Year Research-status Report
家庭裁判所が主導する多機関連携の理論の構築及び運用の促進
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20K13345
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大貝 葵 金沢大学, 法学系, 准教授 (90707978)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 家庭裁判所調査官 / 機関連携 / 少年の成長発達保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
家庭裁判所において、機関連携が進まない弊害を、家庭裁判所から出されている判例をもとに明らかにした。少年たちは、家族を含め環境の調整、すなわち、身元の引き受けが準備できれば社会内での処遇による働きかけにて立ちお直っていくことができる。しかし、環境の調整が整わない場合には、施設への収容も検討される。しかし、家庭に問題があることも多いうえ、家庭裁判所が有する社会資源の数も限られており、環境調整が整わない事例も散見される。その結果、少年たちは、施設への収容を余儀なくされているという課題がある。 家庭裁判所における他機関連携を阻害する要因を、先行研究及び聞き取り調査から明らかにした。他機関連携を阻害する要因として、大きく分けて2つある。一つは、家庭裁判所内部の問題として、調査官の官僚的統制による問題がある。昨今の厳罰化の傾向を受け、非行要因の除去という狭い視点からのケースワークに終始する傾向が助長されることにより、連携先となる機関の選定もきわめて限定的なものとならざるを得なくなっている。もう一つは、機関相互の理解不足が挙げられる。各機関は行政及び民間を含め、管轄権限が異なる主体により運営されている。そのため、縦割り行政の弊害を含め、機関間相互の理解が進まず、結果的に、連携が進まない現状がある。 これらの課題が明らかとなったことを受けて、フランスにおける機関連携の制度化に向けた取り組みを調査した。フランスにおいては、「子どもの成長過程の一貫性を保障する」という理念に基づき、少年司法保護局が、主体的に行政及び民間の団体との機関連携を進めている。また、連携に際して、共通言語や共通指標による少年のアセスメントが可能なように、各機関相互に使用可能な評価軸の策定も進められている。さらに、情報の円滑な共有と獲得を目的として、電子ファイルの作成も進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
犯罪少年に対する処遇の充実のために、他機関連携を日本に先行して行っているフランスの取り組みを調査している。文献による調査により、その制度及び理念はおおむね明らかとなってきたが、実際の運用につき、現地での聞き取り調査が必須である。しかし、Covid-19の影響により渡仏ができず、調査が実施できていない。本来であれば、すでに調査を経て、フランスにおける課題を抽出しつつ、日本への示唆をまとめていく段階にあるが、フランスにおける課題が上記理由により明らかにできていないため、研究自体はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度にフランスでの現地調査を行うべく、調整を図っていく。ただし、Covid-19の影響により、現地調査の実施が困難である場合には、1年間期間を延長する。現地調査を実施がかなわない場合には、フランス少年司法保護局国際部及び広報部を通じて、現在の、フランス犯罪少年手続きにおける他機関連携のありようにつき、質問票を送付し、調査に代替していくことも検討している。 さらに、日本における、家裁での他機関連携を実現する具体的方法論について、家庭裁判所調査官への聞き取り調査などを、並行して進めていくことも検討している。
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Causes of Carryover |
海外調査を目的として予算を組んでいたが、Covid-19の影響により、海外調査が行えなかったために、次年度使用額が生じている。また、学会報告及びそれに向けた、研究会での報告のための出張費として予算を組んでいたが、すべてオンライでの開催となったために、次年度使用額が生じている。 次年度使用計画として、第一に渡仏し、2年間で得た知見の実務運用とその課題につき調査する。第二に、フランス調査により得た知見を分析し、日本での他機関連携の取り組みとの比較を改めて行う。第三に、比較に基づき、日本における他機関連携の現代的課題を改めて分析する。これらの研究成果を論文としてまとめる。
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