2022 Fiscal Year Research-status Report
家庭裁判所が主導する多機関連携の理論の構築及び運用の促進
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20K13345
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大貝 葵 金沢大学, 法学系, 准教授 (90707978)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 少年非行 / 支援 / 多機関連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、フランスにおける多機関連携の取り組みの基本理念とその制度化に向けた取り組みについて、研究した。フランスでは、少年の生育歴や教育歴、社会的支援を受けたその過程などが、司法の介入により中断してしまわないようにすることが重要であるとする。この理念は、子どもの権利条約20条に依拠したものである。この少年の生育歴の継続性というキーワードのもと少年に対する社会的、医療的、教育的支援を継続させるために、司法的介入が配慮すべきであり、そのためには、司法と多機関との連携が必須となると考えられている。このような政策的取り組みは、日本においても非常に有益な示唆となる。 日本における、犯罪少年に対する支援として、多機関での連携が求められている文脈は、少年の多様なニーズに、司法だけでは応えられない/応えるべきではないとう状況から出発している。そこで、現在の少年のニーズにどのように対応するのかが、司法に係属された時点で改めて検討される。この点は、フランスでも同様の発想に立つものの、フランスでは、司法外での支援が原則とされ、その司法外への支援へつなげていくためのコーディネートを司法が行うという役割の明確性があることが改めて浮き彫りとなっている。そのために、これまでの少年の生育歴の情報を集約するアプリケーションツールも開発されている。 日本では、いまだ、連携の統一的目標も特に掲げておらず、必要に迫られて始まった多機関連携の取り組みではあるが、今後、フランスのような制度化されたものとしていくために、司法が果たすべき役割を再考する必要があることが、明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
フランスにおける多機関連携の取り組みについて、理念およびその制度設計の在り方については、文献等によりおおよそ理解し、示唆を得ることができている。ただし、当初の計画の肝である、現場レベルでの課題の発見およびその解決策を、実際に現地に行き、調査するという目的は果たせていない。新型コロナウィルスの感染状況および渡航費用の高騰など、様々課題が多く実現できていないが、来年度は、現地調査に行けるよう調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
フランスでの実際の多機関連携の在り方、特に、少年司法保護局の地方局および社会内処遇機関を中心に、民間団体や学校現場、福祉行政との連携の実際について、聞き取り調査を行いたい。このような聞き取り調査が、フランスでの少年司法における処遇決定にどのように影響しているかについても、フランス少年係判事を中心に聞き取り調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
2022年度に渡仏し、聞き取り調査を行う予定であったが、コロナウィルス感染状況およびロシアウクライナの戦争による渡航費用の上昇等に鑑み、渡仏を断念した。2023年度に、8月末または2月末に渡仏し、聞き取り調査を行い、フランスにおける多機関連携の取り組みの実際を調査する。
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