2020 Fiscal Year Research-status Report
Digitalization of society and economy and Non-conformity in sales contract
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20K13378
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
古谷 貴之 京都産業大学, 法学部, 准教授 (40595849)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会・経済のデジタル化 / 売買 / 契約不適合給付 / 物品売買指令 / デジタルコンテンツ指令 / EU法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会・経済のデジタル化が進む中で売買における契約不適合給付の規律をどのように構想するかについての研究を行うものである。本研究では、EU法及びドイツ法の比較研究を行い、そこで得られた知見を日本法へフィードバックする形で法解釈的及び法政策的な議論を展開することを予定している。 令和2年度は、EU法の比較研究を行った。具体的には、次の2つのEUデジタル関連指令の分析を行った。第1に、消費者物品売買における売主の契約不適合責任と買主の救済について規律する「物品売買指令」(Directive (EU) 2019/771)の分析を行った。この研究において、同指令の意義とその特徴を明らかにすることを試みた。第2に、デジタルコンテンツやデジタルサービスに契約不適合がある場合の事業者の責任や消費者の救済について規律する「デジタルコンテンツ指令」(Directive (EU) 2019/770)の分析を行った。本研究において、「デジタルコンテンツ指令」の意義とその特徴を明らかにし、さらに「物品馬売買指令」と「デジタルコンテンツ指令」の比較を行い、両指令の相違点と特徴を明らかにすることを試みた。研究成果は、拙稿「物品の売買契約に関する新たなEU指令の分析」産法54巻1号127-155頁、同「デジタルコンテンツ及びデジタルサービスの供給契約に関するEU指令の分析」産法54巻2号271-301頁において公表した。 本研究の意義は、上記2つの指令の分析を通じて、デジタル取引における契約不適合責任に関する最新のEU法の動向を明らかにした点にある。また、2つの指令を相互に関連付けて分析することで両指令の相違点や特徴を示すことにもある程度成功した。現在、両指令をEU加盟国で国内法化する作業が進められている。EU加盟国の国内法化作業を検討する上でも両指令の分析が一定の重要性をもつと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、「EU物品売買指令」及び「EUデジタルコンテンツ指令」の分析を行うことで、両指令の意義及び特徴を明らかにすることができた。この研究によって、令和3年度の研究計画に含まれる、EU加盟国における指令の国内法化の状況を分析するための基礎的知見を得ることができた。研究成果の公表も予定通りに行うことができ、現在までの研究は、おおむね順調に進展しているといえる。 その他、本研究を進める上で妨げとなる事情は特段生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、EU加盟国における指令の国内法化作業に着目した検討を行う。「EU物品売買指令」及び「EUデジタルコンテンツ指令」は、2021年7月1日までにEU加盟各国で国内法化されることが予定されている。すでにEU加盟各国において国内法化の作業が進められている。 本研究では、主に、ドイツにおける指令の国内法化の分析を試みる。現在、ドイツでは、連邦政府の法律草案が連邦参議院及び連邦議会に提出され、審議が行われている。 令和3年度には、「ドイツにおけるEU物品売買指令の国内法化」及び「ドイツにおけるEUデジタルコンテンツ指令の国内法化」をテーマにして研究を行う予定である。 そこでの研究成果を踏まえて、令和4年度(最終年度)には、EU法及びドイツ法の比較研究を基礎に、わが国の売買における契約不適合給付について法解釈的及び法政策的観点から検討を行う予定である。その結果として、民法(売買法)の領域でデジタル・アップデートを必要とするかどうかにつき、本研究における成果を示したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の国内調査(学会・研究会への参加費及び宿泊費として10万円)、また、外国での調査(ドイツ・ハンブルク大学又はマックス=プランク外国私法・国際私法研究所/ハンブルクとして、渡航費及び滞在費を含めて35万円)を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、国内の学会・研究会の参加及び外国法調査の計画を中止したため、旅費の支出を行わなかった。そのため、この旅費の分について未使用額が生じた。これについて、次年度に繰り越すことを予定している。 次年度において、社会情勢を踏まえつつ、研究費用(旅費)の適切な執行に努めたいと考えている。
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