2021 Fiscal Year Research-status Report
Digitalization of society and economy and Non-conformity in sales contract
Project/Area Number |
20K13378
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
古谷 貴之 京都産業大学, 法学部, 准教授 (40595849)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 契約不適合 / 社会・経済のデジタル化 / デジタルコンテンツ指令 / 物品売買指令 / EU法 / ドイツ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「社会・経済のデジタル化と売買における契約不適合給付」に関する研究を行うものである。令和3年度は、EUデジタルコンテンツ指令(2019/770/EU)及び物品売買指令(2019/771/EU)のドイツにおける国内法化作業に着目して検討を行った。具体的には、①拙稿「ドイツにおけるEU物品売買指令の国内法化―連邦司法・消費者保護省(BMJV)参事官草案の検討」産大法学55巻1号(2021年)93-159頁において、「EU物品売買指令を国内法に転換するための法律草案」の検討を行った。また、②拙稿「ドイツにおけるEUデジタルコンテンツ指令の国内法化―連邦政府法律草案の検討」産大法学55巻2号(2021年)161-295頁では、ドイツ連邦政府が2021年1月13日に公表した「EUデジタルコンテンツ指令を国内法に転換するための法律草案」の検討を行った。さらに、③拙稿「ドイツ瑕疵担保法の改革(1)―EU物品売買指令の国内法化―」産大法学55巻3・4号(2022年)209-239頁、及び、④「ドイツ瑕疵担保法の改革(2)―EUデジタルコンテンツ指令の国内法化―」産大法学56巻1号(2022年)29-57頁において、最終的に成立した物品売買指令及びデジタルコンテンツ指令を国内法に転換するための法律に関する検討を行った。 本研究の意義は、指令の国内法化に際してEU加盟国の中でも特に熱心に議論が行われたドイツ法の状況をみることで、日本法における契約不適合責任の現代化を検討する際の比較法的知見を得ることができた点にある。今後、ドイツ以外のEU加盟国の動向も踏まえて、さらに比較法的な視点から、指令の国内法化後のEU加盟国の法状況を調査・検討していくことを予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、EU加盟国におけるデジタルコンテンツ指令(2019/770/EU)及び物品売買指令(2019/771/EU)の国内法化作業を整理・分析することを予定していた。両指令の国内法化実施期限(2021年7月31日)があらかじめ設定されており、この立法スケジュールに沿って作業を進めることができた。特に令和3年度における検討対象国であったドイツでは、早くから指令の国内法化のための政府草案(法律草案)が公表され、議会等における議事録についても詳細なものが公表されたことから、同国における国内法化作業の過程を仔細に参照しながら作業を進めることができた。このことからも、当初の計画通りに、両指令の国内法化作業に関する調査・分析作業を進めることができた。また、立法資料に加えて、豊富な学術文献にも触れることができ、ドイツ法の議論を(批判的観点も含めて)様々な観点から整理・分析することができた。以上のことから、本研究は、現在のところ、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度(最終年度)は、EU法及びドイツ法の研究を基礎に、わが国の売買における契約不適合給付について法解釈的及び法政策的観点から検討を行いたい。とくにEU法及びドイツ法の分析から得られた比較法的知見に基づき、わが国の改正民法の内容を検討し、民法(売買法)の領域においてデジタル・アップデートを必要とするかどうかという問題について本研究における成果(一定の結論)を示したいと考えている。
|