2021 Fiscal Year Research-status Report
Epistemic Democracy and Systematic Review of Mathematical Models of Democracy: Deliberation, Majority Voting, and Bayesian Update
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20K13415
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
坂井 亮太 中央学院大学, 法学部, 講師 (20735386)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 政治理論 / 認識的デモクラシー論 / 数理モデル / システマティック・レビュー / ロバストネス分析 / 多様性が能力に勝る定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主な研究実績は、(1)単著の学術図書の出版の実現(民間資金の活用を含む)、(2)日本学術会議協力学術研究団体学会機関誌での招待論文の掲載に分かれる。
(1)単著の学術書籍『民主主義を数理で擁護する―認識的デモクラシー論のモデル分析の方法』(勁草書房、2022年、ISBN 978-4-326-30311-3)を上梓した。もって研究成果の一般読者への還元を実現した。成果公表には、三菱財団からの研究助成を得た。この著書では、会議に誰が参加するべきか、という問いを立てた。この問いに対して、数理モデル分析の結果をシステマティック・レビューの手法で統合することにより答えを得ることを目指した。 その結果、「多様性が能力に勝る定理」と呼ばれる認識的デモクラシー論において援用される機会が多い数理モデルに関して、課題の予測可能性が会議体の最適構成を決定することを明らかにした。分析を通じて、専門家と多様な市民の混合体が、認識的に優れた選択を行う可能性があることを理論的に提起した。
(2)公共選択学会の機関誌に、招待論文「政治理論における数理モデル分析: 多様性が能力に勝る定理をめぐる論争を題材として」『公共選択』(77) 42-61、2022年を公表した。この論文では、単著の内容をさらに進める研究を行った。具体的には、数理モデル分析のシステマティック・レビューで得られた頑強な結果を、実験環境においてテストすることで、数理モデル分析の現実世界における応用可能性(外的妥当性)を調査・向上させる提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、研究計画において目標としていた学術書の出版を実現することができた。そのため、研究はおおむね順調に進捗しているといえる。 本研究は、系統的レビュー(systematic review)の手法を用いて、意思決定手続に関するこれまでの研究蓄積をモデル毎に統合することで、数理モデル分析の信頼性を高めることを目的としていた。研究手順は以下である。①まず、着想を科学哲学におけるモデル比較の手法であるロバストネス分析にもとめる。②この分析手法の弱点である広範な比較サンプルの収集という課題を、新たに系統的レビューの方法で補う改良を行う。③構築した分析手法を用いて、熟議、 多数決、ベイズ更新の3種類の数理モデル群を調査し、熟議・審議会・会議における参加者の最適構成を明らかにする。 既に、このうち①および②についての研究成果を公表してきた。2021年度は、③の段階として、熟議の数理モデルについて、そのモデル分析と現実世界への応用可能性を探究し、単著の出版および学術論文の公表を行った。研究計画において設定した3段階のステージのうち第3段階の一部分を実現することができたため、研究はおおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の3年目となる2022年度は、多数決、ベイズ更新についての個別の数理モデルに関する研究を進める。既に、熟議の数理モデルについての研究は着手済みであり、学術書の出版と論文公表の成果を実現している。 2021年度は、研究書を出版するなかで、本研究計画の理論的検討および提案手法の応用を実現した。なかでも、熟議の数理モデルである「多様性が能力に勝る定理」について、モデルの妥当性をめぐり政治理論において提起された批判を検討し、システマティック・レビューを行うことで、これらの論争に決着をつけることに貢献した。 2022年度は、同様の検討を横展開して、多数決の数理モデル「コンドルセの陪審定理」、予測の更新モデルである「ベイズ更新」への応用を試みる。コンドルセの陪審定理についてのレビューを実施した先行研究(Grofman, Owen and Feld, 1983)を乗り越えて、最新の研究を含めてシステマティック・レビューを実施することにより、近年蓄積が進む最新の研究成果を集約する。 ベイズ更新のモデルについての検討も、研究期間3年目の課題とする。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症のまん延に伴う海外渡航、国内移動の制限により、国際学会報告にともなう海外出張および国内学会報告にともなう国内出張が中止となったため。 コロナウィルス感染症の終息があれば、国際学会および国内学会での対面での参加を行っていく。
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Research Products
(2 results)